その辺りが住居表示でいうところの日本橋人形町。
人形町通りから明治座のある清洲橋通りや隅田川方向へ向かい、浜町川の跡に残る緑道を渡ると住所が日本橋浜町になる。
足早に向かって二回転目の先頭になんとか潜り込む。全18席と訊く店内はぎっしりと埋まります。
大衆料理「川治」のおひるは、日替わりの四品。
四品の定食には”ショウサシ”なるものを添えることができる。
初めて訪れた時はなんの符丁かと思い聞いていたのだけど(笑)、
それはつまり”小刺し”のことであるらしい。“ショウサシツキデ”とお願いすれば、例えばこんな、
小というにはたっぷりな「ねぎとろ」のお皿がやってくるのです。
或る日には、小刺し付きで「天ブリ煮つけ」。麗しき煮上がりの艶に針生姜。
繊細にして大胆な天然鰤の身と脂。
それが煮汁に促されるようにぐぐっと迫って、
思わず瞠目してしまいます。
或るおひるの小刺しは、平目とワラサ。ワラサの切り身が真っ昼間から美しい(笑)。
そしてそのふた切れがひるのひと時に贅沢にして丁度よい。
鰆の塩焼きなんぞと悩んで選んだのが、
「やなぎのまい煮つけ」小刺し付き。ガオー!と口を開けた一尾の煮つけに、
これまた贅沢さを思いつつ箸を動かす。
皮目や骨の際の白身がたいそう美味しゅうございます。
またまた或る日には「一汐まとう鯛」。馬頭鯛の塩焼きなんてのをいただくのは、
もしかしたら初めてことかもしれないなぁと考えつつ、
お皿の上の切り身二片に、
独特の菱形の体躯の真ん中に所謂”図星”の斑点のある姿を思い浮かべる。
そうか、馬頭鯛ってなかなか淡白な、
こふいふ食べ口なのでありますね。
これまた或る日の小刺しは、ビンチョウのブツ。いい具合にブツ切りの包丁の具合。
夜の部の煮魚も焼き魚もそしてお造りも惣菜すらも、
絶対いいに違いないと思う瞬間です。
そして例によって四品から選んだのが「いか大根」。鰤大根と同じく、主役は大根。
烏賊の風味が滲み込んだ大根が旨い。
その分烏賊そのものは部位により噛み切り難くかったりはするけれど、
それも美味しい大根のためであるのです(笑)。
人形町の向こう、日本橋浜町の裏通りに大衆料理と謳う「川治」がある。絶対いいに違いない宵闇の「川治」へ、いつ行けるかな。
きっと予約が必要なのでしょね。
「川治」
中央区日本橋浜町2-8-5 [Map] 03-3666-1100