叔母一族のお墓があり、このところ法事で訪れることがあったためでもあるけれど、考えたら他にはなかなか用事がない。
法事ではマイクロバスなんかで移動してしまうので、小平駅に降り立つのはお久し振りだ。
西武線の特に新宿線沿線は、どの駅も似通った造りになっていて、没個性。
電鉄としてのデザインや造作のセンスはちょっと残念だと思うことも少なくない。
その辺りも頑張って欲しいなぁなどと考えつつ、霊園のある北口とは逆の南口の階段を降りました。
ロータリーを西友の前から辿って左に出る。
そのまま行くとすぐに、道が狭まる雰囲気になる。
標識をみるとそこからは「都立 狭山・境緑道」という道になっていて、車の通行は出来ないようになっている。
説明文を読むと、山口・村山貯水池から境浄水場に送るために大正12~14年に敷設した水道施設(水道管)を利用して、散策路・サイクリングロードをしたものだとある。
この界隈は、野火止用水を代表とする水路や水道が幾筋もつくられているのです。のんびりした緑道では、桜の花が散り始めていました。
あじさい公園という公園脇の池を眺めたりしながらてくてく進んだ緑道が斜めに交差した小路の辺り。桜の花弁の向こうにみつけた小さな平屋の家屋に紺鼠色の暖簾が揺れていました。
店先のお品書きを確かめてから暖簾を払うと目に映ったのはなんと!ロの字で囲む囲炉裏端。シブいシブ過ぎる。
残念ながら炭に火は熾っていませんが、ここで晩酌しちゃいたい気分になってきます(笑)。
3人の客人たちの様子をチラ見しつつ、厨房から出てきた女将さんに注文の声を掛けました。ややあって届いたのは「肉汁付きうどん」と「野菜天ぷら」です。
浅いお皿に盛られたうどんはエッジが立っていて、ぐりぐりっと縒れた感じが目を惹きます。噛み応えのある旨いうどんは成る程、手打ちならではだなぁと感心する。
豚バラ肉だけがたっぷり浮かぶつけ汁。女将さん曰くは、うどんにも塩分があるので敢えてつけ汁は薄めにしているそう。
物足りないと思う人もいるかもしれないけれど、アタシはそうしているんだ、と。
成る程、美味しい汁なのだけど、仰る通り少々物足りなくて、ちょっぴり醤油を足しちゃいました、ごめんなさい。
七味を利かすのも手ですよね。
天ぷらも衣がぼってりなんてしない、爽やかな揚げ口。肉汁うどんや糧(菠薐草のお浸しなど)、野菜の天ぷら等を添えるのがこの辺りの風習なのであります。
お願いしていた大盛りの分を女将さんが別皿で届けてくれた。湯掻き立てと思しきうどんは、今しがたいただいたうどんとは明らかに違うもの。
包丁を入れたそのままの長さであるし、透明感がやや強い。
噛み応えの中にしなやかな弾力があり、生地の甘さがよりふくよかだ。
いただくタイミングだけでもこれだけの違いがあるのだから、うどんて面白いよね。
桜咲く狭山境緑道沿いに手打ちうどんの「指田屋」の暖簾がある。女将さん曰くは、ここでもう30数年営んでいるんだそう。
生地には群馬産の粉に外国産を含む粉を加えていて、それは地粉だけよりもやっぱり打ち易いこともあるからだと仰る。
粉、水、塩の量加減は、長年目分量で配合しているそう。
近くの旧青梅街道沿いにあった「指田屋」は閉めてしまったけれど、「ふるさと村」にもうどん処があるよと女将さん。
武蔵野手打ちうどん保存普及会会長にして“うどん博士”として知られた加藤有次さんとも面識があったようで、「エン座」の加藤さんに、やっぱりカトウサンはうどんに秀でるのかなぁ的な話をしたこともあるみたい。
女将さん、誠に正しき武蔵野うどんをありがとう。
今度は「つけカレー汁うどん」に「焼きだんご」あたりをいただきにお邪魔します。
「指田屋」水道道路店
小平市天神町2-5-25 [Map] 042-343-3791