川面に目を遣ると、飛び石を辿るひとの足元に亀がいる。 なんだか愉しそうな光景です。
そのまま河原町通りを上がって、一本上流に見えていた橋へと回り道。当の出町橋のたもとには、「鯖街道口 従是洛中」と書かれた石碑があって、 出町柳が洛中と鯖街道とを結ぶ結節点だったことが窺えます。
踵を返して河原町通りへと戻る。 見据えた正面、割と狭い間口で奥へと伸びているのが、出町桝形商店街。 そしてその商店街をちょっと入ったところでひとを集めているのが、 元祖鯖寿し「満寿形屋」だ。
開店早々にして既に満席で、店前の縁台で暫し待つ。 硝子の枠に提げられたホワイトボードには、 「きつねうどん」「梅うどん」から「肉カレーうどん」「にしんそば」。 「鍋焼きうどん」に「中華そば」まである。 そう、「満寿形屋」は、”めんるい”の店でもあるのです。
ご相席でと案内された小さなテーブルへ。 壁に掛かった品札から察するに、鯖寿しをいただくには「鯖寿しうどんセット」になるようだと、 お姐さんに声を掛けます。
届いたお膳には、たっぷりの刻み葱とおぼろ、蒲鉾を浮かべたうどんと鯖寿し二切れ。 注目の鯖寿司を愛でるように眺めます。 「いづ重」の「鯖姿寿司」は、側面まですっかり包む勢いで鯖の身が舎利を覆っていたけれど、 こちらのは四角い主屋に載せたアーチ状の屋根のよう(笑)。
薄い昆布に木の芽が透けて美しい。こんな昆布だったらなるほど、外さずに一緒にいただける。 ただ、舎利と鯖の身とのバランスは、「いづ重」が好み。 鯖のシズルもちょっと物足りないかなぁ。
一方、おうどんはというと、 出汁のたっぷり利いた汁にやや細めで柔らかなうどん。例えば、祇をん「萬屋」でいただいたうどんにも通じるタイプ。 鯖寿しの舎利の残りをうどん汁でいただくと、 何故かちょっと力んでいた肩の力がほっと抜けたりして(笑)。
気がつけば、「うどんセット」とは別の場所に「鯖寿し 一人前」や「鯖姿寿し」の品札もある。 そうか、「鯖寿し」と「鯖姿寿し」はグレードが違うのでありますか。 どうやら予約が必要らしいけど、今度はいっちょ奮発して、「鯖姿寿し」に出会いたいな。
元祖鯖街道の店を謳う、すし・めんるい「満寿形屋」。 今もやっぱり若狭の国から届く鯖を使っているのかと思いきや、 扉の脇には「大分県豊後水道の鯖を使用」と明示してある。 流通事情のまったく違う今となっては、色々と事情や工夫があるのでしょうね。
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「満寿形屋」 京都市上京区桝形通出町西入ル二神町179 [Map] 075-231-4209
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