ところは祇園の切り通し。
ロジウラーとしては、賑やかな花見小路などよりも、断然気になる筋であります。
例えば、うどん・親子丼「ぎをん権兵衛」やバー「コペルニクス的転回」も切り通し沿いのお店。
そして、八坂神社前の「いづ重」初代の奉公先だという、同じく切り通し沿いのお店「いづう」にもいつか寄ってみたいと思っていました。
白川を渡る巽橋方向からアプローチするのが風情であります。
真っ白な暖簾を払って入り込んだ店内は、妙な飾り気のない、質実な佇まい。
たたきに置かれた畳敷きの椅子に腰を下ろします。
テーブルの低さが、どこか峠のお茶屋風な居心地を連想させたりして。
開くお品書きも、質実な匂いのする。
「鯖姿寿司」「小鯛の雀寿司」「鯛寿司」「鱧寿司」から巻き寿司4種に「箱寿司」「京ちらし寿司」「蒸し寿司」。
「御台所寿司」「弥次喜多寿司」とはどんなのだろうと思いつつ、目線を「盛合せ寿司」に移して、お願いしたのが「鯖寿司小鯛寿司盛合せ」。
折角なので(?)、冷たいお酒もいただきましょう。
伏見の酒「一滴」をつつつと舐めながら待つこと数分。
艶々とした昆布で包んだ鯖寿司、そして小鯛鮨が三切れづつでやってきました。
昆布はどうしたらよいの?と尋ねたら、外して召し上がりください、と云う。勿論食べられますので、お好みで。
鯖や小鯛の身と酢飯が分かれてしまわないように細心の注意を払って、くるりと昆布を剥がしていただきます。
脂の載った鯖の旨みを想像しながら口にしてしまった所為か、あっさりし過ぎて物足りないなぁというのが、正直なところ。
小鯛は、その名の通り小さめの鯛で、若いがゆえに皮目を残せるのだそう。
なるほど鯛らしい風味が仄かにする、とても淡白なお味です。
天明元年(1781年)の創業という、寿し「いづう」。
帰り際にいただいた小さなリーフレットには、初代である「いづみや卯兵衛」の名をとって屋号を「いづう」とした、とある。
京の鯖寿司は古来、若狭湾から洛中へのいわゆる鯖街道で運ばれ、お祭りなどの御目出度い「晴れの日」にいただく風習のものであった、とも。
「いづう」の鯖寿司をいただくに、二百余年の伝統を守ることは、なにものにも迎合せず頑なに変えないことなのです、と語っているように思ったりする。
それは、なんとはなしに寂しくも感じる愛想のなさと、裏腹なことなのかもしれません。
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「いづう」
京都市東山区八坂新地清本町367
[Map] 075-561-0751
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