真冬の京都とて、ひと通りの少なくない夜の先斗町。
ところが、あてにしていた歌舞練場前のおでん屋さんは、灯りが消えている。
さて困ったと来た通りを戻ってお店を物色するも、
敷居の高そうなお店たちからは、和めそうな雰囲気が伝わりません。
通り中程の道脇に出されていた品書きを覗いていると、
どこからか店に戻るところらしき男性に「よかったら寄っていってくださいー」と声を掛けられる。
そんなひと声に背中を押されるようにして、その奥の暖簾へ。
「あ、さきほどの…」という店主の笑顔とカウンターが迎える「華楽」で今夜の一献をいただきましょう。
目の前の「鶏大根」から右へと大皿に用意されたおばんざいが並んでいる。
その中からまずは「大根のぜいたく煮」をお願いして、燗酒をおススメで。
干した大根を戻して煮含めたもので、「沢庵を炊いた感じ」というけれど、繊維の隅々まで出汁が滲みているようでしみじみする品の佳さ。
京の米と水で醸す「京山水」の上燗を舐めながら、柚子の薫りほのかな「小芋のゆず煮」を。
ちょい辛口の京の酒「まるたけえびす」も上燗でいただいて、「天然ぶりの酒焼」。
寒鰤の脂のしどけなさが薄くぱりっと焼いた香ばしさと一緒に品よく愉しめる。
ちょうど節分。
鬼の頭領を呑んじゃえと(?)「酒呑童子」を熱燗でいただいて、そのあてに万願寺唐辛子を焼いてもらう。甘いような香気としゃきっとした歯触りがいい。
そして、
嵯峨豆腐と云えば真っ先にその名があがるという「もりか」の白豆腐を使った「湯豆腐」をはふはふ。
苦汁の代わりに「澄まし粉」を使っているという「森嘉」の豆腐は、肌理の細やかにふるふるしながら口のなかで解けていく。絹ごしと木綿の中間の、とされているそうだけど、絹ごしよりも繊細なんじゃないかな。
店主やお手伝い女性陣の朗らかさと和むお皿たちに、ゆるゆる。なんだかとっても癒される時間が過ごせました。
「華楽」 京都市中京区先斗町三条下ル若松町139 075-212-0816
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