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蕎麦懐石「無庵」で昼蕎麦游膳蕎麦豆腐焼味噌合鴨ローストぶっかけ壁の瓦酒が欲しい

NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」の主題歌「Progress」やSMAPへの提供曲「夜空ノムコウ」で知られるスガシカオ。
配信で何度かライブを覗いたことがあって、2024年の両国国技館「J-WAVEトーキョーギタージャンボリー」で初めて、ライブな演奏を聴いた。
もっとも、一番のお目当ては、大橋トリオ & THE CHARM PARKではあったのだけれど(^^)。
その後、新譜に合わせてツアーを敢行すると知って、
物は試しにとツアー初日は師走の月曜日、
立川公演の切符を手にしたのであります。

そして、立川に行くのなら、
以前から気になっていた一軒があると、
おひる時の予約をしてやってきた。
ところは、立川駅北口。
多摩モノレールの立川北駅前の交叉点から、
緑川通りに進んですぐの横丁へと左折する。
駅前エリアであり乍ら、
界隈は静かな住宅地然。
レジャーホテルが隣接するも、
妖しさが足りない(^^)。

打ち水のされた大谷石の土間が迎える。 「無庵」と示す行燈看板には、
草花のシルエットの意匠が施されている。

敷地の隅には、鹿威しよろしく、
竹筒から水盤に水が注がれている。 生けるように置かれた花木が、
水盤、そして店先を明るくしています。

大振りな暖簾を払い、予約の名を告げる。 抑えた照明の下案内されたのは、
右手中程のテーブル席。
すぐお隣は、個室の設え。
スタッフにも読めない揮毫の文字が横たわる。
収集された古物のひとつだそうだ。

通路越しに見遣るセンターゾーンには、
オーディオ機器と山積みのCD。 JAZZの流れるその奥の壁側には、
見るからに立派なスピーカーが鎮座。
どうやら真空管アンプもあるらしい。
きっと高価なものに違いない(^^)。

階段も見付かる一番奥の壁には何やら、
波型の文様が描かれている。 なんだろと少し目を凝らすと、
それが瓦の断面であることが判る。
漆喰やモルタルの壁に、
瓦を水平に埋め込むなんて、
面白くも凝ったことをするものだ。

ふと視線を落として床面をみると、
土間もまた凝っている。 俗に云う洗い出しのコンクリートで、
しかも場所場所で表情が違う。

あー、やっぱりこの雰囲気だったら、
一杯呑りつつ過ごしたいなーと、
飲み物の品書きを見ながらそう思う。
しかし乍らこの日は、
愛車を駆って来ているのであります。
くーっ(^^)。

そこで雰囲気だけでもとお願いしたのが、
「MARUKU」なるアルコールフリーなスタウト。 小樽の醸造所から届けられた黒のビールは、
ちょっとビターで、なんだか不思議な感じ。
近頃はこんなノンアルビールもあるのかー、
と感心しつつ、グラスを傾ける。

お昼のそば游膳、
最初のお品は、「そば豆腐」。 蕎麦粉と本葛粉とで練り上げたもの。
真ん中に銀杏が載り、
蟹のあんが全体を覆ってる。
ややしっかり目の味付けの蟹あんが、
全体の美味しさを盛り上げる。
うーん、やっぱり日本酒が欲しい(^^)。

続いて、木彫りで塗りのお盆に載って、
五品の点心がやってきた。 大振りな花豆に蔓紫のお浸し、
芋の田舎煮に赤蕪、鴨のテリーヌ。
蔓紫のぬめりと汁の色に、
金沢「いたる」でいただいた、
「金時草おひたし」を思い出す。

まるでお正月のお膳みたいだねー、
などと云いながら、口に運ぶ。 少し大口を開けて、鴨のテリーヌ。
うむー、焼酎でもいいなー(^^)。

厚手の陶器の角皿で登場は、
自家製の白味噌を使ったという「やきみそ」。 胡桃、葱、そして金柑を味噌に混ぜ込んでいて、
じっくりと炙り焼いた様子が判る。
端からちょっとづつ箸で掬って口へ。
あゝ、焼けた味噌と胡桃の芳ばしさよ。
そこに金柑の柑橘の香りが粋に利いている。
もー、酒でも焼酎でも持って来い、ってね(^^)。

お次は、洋風なるも蕎麦屋らしい、
「あい鴨のロースト」のお皿。 定番のひとつに思うバルサミコ酢のソース、
その脇に辛味大根と山葵を合わせた薬味。
このホースラディッシュのような薬味が、
鴨ローストによく似合う。
聖護院蕪を炊いたものとあやめカブが付け合わせ。
うーむ、白のワインでもいいかも(^^)。

「天ぷら盛り合わせ」には、
鱚、薩摩芋、蓮根の天ぷら。 開いた鱚はふわっふわ。
ネタも揚げ口も文句なし。
寒くなってくると蓮根、美味しくなるね、
などと話しつつ、薩摩芋を齧ったら、
あー、甘い、お菓子みたいだー。
聞けば、焼き芋にしてから揚げる、
という手間をかけているそう。
うーむ、なるほどだ。

お食事は勿論お蕎麦で、
大きめの塗りの椀に盛られた「ぶっかけそば」。 トッピングのおろした辛味大根と薬味、
別皿の揚げ玉も投入して、さっとひと混ぜ。
ずるずる、ずるずる。
葱だと思っていた薬味は、大根の葉っぽい。
うん、潔くもうんまい蕎麦だ。

口の空いた湯桶で運ばれてきた蕎麦湯。 蕎麦粉がどんどん沈んでいくので、
よーく掻き混ぜてから蕎麦猪口に注ぐ。
そこへ添えてくれた蕎麦汁を加える。
やっぱり、いい蕎麦屋は蕎麦湯も旨い(^^)。

デザートには、
金柑の水煮と芋の羊羹。 酸味に強い苦みの印象がある金柑が、
すっきりとした甘味で実に美味しい。
自分史上最上の金柑の味わいだ。

立川は駅北口、立川北駅近くの曙町。
意外なほど静かな住宅地の横丁に、
蕎麦懐石「無庵」は、ある。 開業は、1989年(平成元年)のこと。
店主の趣味と拘りが内外装にも調度にも、
蕎麦屋の料理酒肴にも勿論蕎麦にも、
存分にかつ一貫して表現されていて、
それに嫌味も気取りもないのが、いい。
今度は酒を吞めるよう、
絶対に電車で向かいたい。
また昼でもいいし、夜の部も気に掛かる。
そうそう、男子の厠は、店の外。
暖簾を潜り出て左手に御座います(^^)。

「無庵」
東京都立川市曙町1-28-5 [Map]
050-5595-1455
http://www.muan.jp/

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