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Spicy House「クックダン」で夜の部ご立派白アスパラ極上葱栗男爵鯨さえずりカレー

八丁堀二丁目は、東京建設会館の右手から入る、首都高の谷間を背にした裏通り。
コンクリート打ちっぱなし仕様の外壁に、白鳳建築設計事務所とステンレスの切文字を付けたHAKUHO BLDG.の一階に、Spicy House「クックダン」は、ある。
普段お世話になってきたおひる時には、
スパイス成分を濃密にたっぷりと含んだソースをベースにして、
鹿肉とか岩中豚とか合鴨とか牡蠣とか天然鮪といった、
お!と思わせる食材を合わせたカレーを、
あれこれと繰り出してきて、愉しませてくれた。

ランチ時に訪ねて、その度に、
壁に貼られた筆書きのメニューを眺めては、
こりゃきっと、夜も愉しいに違いないと確信し、
どこかで潜入したいと思っていたのです。

機会を得た5月某日の八丁堀二丁目の裏通り。
狭い店内には先乗りしていたひと組があり、
我々の闖入により忽ち満員御礼札止めとなる。
そんな狭さの店が、仮に地階の奥にでもあれば、
隠れ家的アジトっぽさも生まれてこようものも、
なにせ硝子越しに店内丸見えの路面店ゆえ、
逃げも隠れもしない開かれた店構えなのであります。

壁に振り向けばそこにはいつものメニュー。 どれどれとその夜のバラエティ探索のはじまりだ。

壁に向かって左手には「野菜」と題した貼紙。
そのひとつひとつを噛みしめるように読んでいく。
春菊とラディッシュのサラダ
ピーマンのコールスロー
ぜいたくトマトと新玉ねぎサラダ
海老とトロナス ガーリックビネガー炒め
茹でたて栗だんしゃくオリーブソルト
春キャベツのおひたし
極上ネギのおひたし
いぶりがっこくるみチーズ

そして、ここからアスパラの4品が並ぶ。
アスパラのミニピザ
茹でたてグリーンアスパラと
スナップエンドウのホットサラダ
エビとグリーンアスパラ マヨネーズ添え
ホワイトアスパラガス

最後の行をぱっと読んですぐさま、
あっと小さく叫んでから、
アスパラガスの白を!と註文を伝えます。
例年お願いしている北海道の直販サイトに、
発注しそびれていたことを思い出して、
飛び付いた次第なのであります。

そんなホワイトアスパラガスのお皿が、
こりゃまた届いて吃驚。 フランス・ロワール産と聞いたそれは、
ドドドンとたっぷりとぶっとくて大振りで。
脇にハイライトの箱で置かないと、
そのサイズ感が伝わり難いけれど、
一目見ればただただ、ご立派なのだ。

こりゃ旨そうだと、
穂先や根元の断面を愛でるように眺める(^^)。 肌理が細かく整い、見た目にもジューシー。
こんなサイズのホワイトアスパラはやっぱり、
彼の地のものでないとあかんのかなぁと思い至る。

後輩くんに穂先側の半分を譲って、
残り部分にナイフを入れ、
ソースをたっぷり載せて口へ運ぶ。 くーーーーーっ。
うまーい美味しい、こりゃ堪らん(^^)。
茹で具合も丁度よく、
ホワイトアスパラ独特の澄んだ香りが溢れ出す。
自家製マヨネーズ、とされたソースは謂わば、
オランディーズソースの一種だね。

こりゃ白ワインだとグラスでいただいて、
グビグビグビ(^^)。
そこにそっと届いたのは、
「極上ネギのおひたし」。 ここでいう”極上ネギ”とは「極楽ねぎ」のこと。
千葉は東金の極楽寺周辺で栽培される、
分葱のブランド名が「極楽ねぎ」なんだという。
分葱は、ご存じの通り、葱と玉葱の交雑種。
香りよく辛味はほぼなくて甘味たっぷり。
九条葱を思い出す感じの美味しさだ。
生のままサラダでもねとダン料理長は仰る。

そのダン料理長に、
次のお酒は何がよいかと訊ねたら、
ならばこれはと、ドンとご提案いただいたのが、
「CARDAMON TAKE7」の一升瓶。 “スパイス&焼酎”とショルダーフレーズがあって、
つまりは、スパイスと焼酎を使ったリキュール。
熊本は球磨にある豊永酒造がつくる変わり種は、
専用の米焼酎をベースに、
スパイスの王様カルダモンをたっぷりと使っていて、
米の甘みの上にカルダモンが爽快に香る呑み口。
ソーダ割でいただけば、成る程、
ぶわわんとスパイシーな香りが追い駆けてくる。
流石、”Spicy House”、カレーのお店だーと、
思わずニヤリとしてしまう(^^)。

お次に届いたお皿は、
「茹でたて栗だんしゃくオリーブソルト」。 黄金男爵、クリじゃがいも、栗じゃがなど、
そう呼ばれるじゃが芋は、
一般に、北あかりであるらしい。
薄皮に包まれ黄色味を帯びたホクホクに、
オリーブソルトがその甘さを引き立てる。
あれ?ぺろっと食べちゃったじゃん(^^)。

「海鮮」と題した真ん中の貼紙からは、
「かつを 薬味たっぷりのおさしみ」。 なかなかに脂ののった初鰹に、
茗荷や生姜の細かい千切り薬味がよく似合う。
此処がカレー屋さんだということをふと、
いや、すっかり忘れてしまいそうです。

次のお酒はどーするかなーと改めて、
壁に向かって右側の貼紙を眺め見る。 ランチタイムに美味しくいただいて、
妙に覚えているアールグレイのグラスを、
思い出しての「アールグレイハイ」。
アールグレイの豊かな香りがここにも。
いい、うん、いい(^^)。

近日開催予定の「八丁堀 与力同心 はしご酒」
その参加店舗の話なんかをし乍ら、
ふたたび野菜の貼紙に戻って、
「アスパラのミニピザ」。 如何にも今しがた手で伸ばしました、
的な生地がいい。
そしてその生地が薄くクリスーピーで、
ローマスタイルを髣髴とさせる感じ。
たっぷり一面のチーズのコク味に、
グリーンアスパラの香りと旨味が炸裂して、
うんうん、イケるピザだ。

〆る習慣は特段ないのだけれど、
ここではやっぱりカレーをいただいて終わりたい。
ということで、壁貼りメニューの下段から、
これまた変わり種「鯨さえずりカレー」。 鯨のさえずりとはご存じの通り、鯨の舌のこと。
牛のタンよりもきっと大きいであろう鯨タンは、
旨味たっぷりで、フルっとした食感が面白い。
そして、ベースのカレーソースに盤石を思う。
なんだかこー、一番好みのカレーだと、
ようやく気が付いたような気がする。
スパイシーで香り高いけれど、
それが主張し過ぎず、勿論辛過ぎず。
コクや濃度の感じもジャストフィットだ。

八丁堀二丁目、東京建設会館の右手から入る、
首都高の谷間を背にした裏通りに、
Spicy House「クックダン」は、ある。 もう早くも開店から5年を迎えたという。
硝子張りの路面店であるがため、
隠れようにも隠れられないのだけれど、
どこかアジト的隠れ家っぽさがあるのは、
小さなスペースの真正面で迎えてくれる、
ダン料理長(檀上雷太店主)の魅力的な個性ゆえ。
おひる時に繰り出す変わり種カレーも勿論、
どんなん出てるかなーと気掛かりな一方、
気になる食材を見付けては、
ひと捻りふた捻りある料理に仕立て供する、
夜の部にもまた伺いたい、であります。

「クックダン」
東京都中央区八丁堀2-1-7 白鳳ビル1F [Map]
03-5244-9426
https://www.instagram.com/cook_dan_

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