column/02059
味処「叶」
東京への帰り際。栄の「スカイル」裏手にある「味噌カツ丼」の最右翼、「叶」さんへお邪魔してみました。クランク状の路地を辿ると、”味噌カツ丼の店”のイメージとはちと違う小料理屋の風情に、窺うように引き戸を開けます。閉店間際ゆえか、先客の姿はない。中程のテーブルに案内されて、あさり汁付で「味噌カツ丼」をお願いしました。首を90度に折り曲げた大将が、その姿のまま右左へ動いて調理してくれる。「お待ちどーさま」。オバチャンが届けてくれたどんぶりには、ゴチャっとなにやらチョコレート色の物体が載っている。中央で同じようにすっかり赤茶色に染まっているのがどうやら玉子らしい。どこから手をつけたらいいものやら一瞬戸惑うも、えいっと真ン中から突き崩すように割り箸を入れてみる。とろんと玉子の黄身が周囲に綻んで、赤茶色に黄の色を注す。どこが衣やらお肉やらが判然としないまま、掴んだカツを口にすると、濃くてクドそうな見かけと違って、めちゃめちゃ意外なほど軽妙な味わいに驚く。あっはは~、面白い。でも、こう、なんつーか、やっぱり、肉自体の旨味とか揚げ立て衣の魅力とかをあまりに置き去りにしているような気がして、なんだか複雑な心持ちであります。
「叶」 名古屋市中区栄3-4-110 052-241-3471