随分と久し振りに歩く元町です。
街灯に電飾が飾られていて、クリスマスの残り香を思わせるメインストリートは、キタムラやフクゾー、スタージュリーの本店の並ぶ有名お買い物ゾーン。
でもいつも気になるのは、
一本山手公園側の裏道なンです。
その元町仲通りでも特にエキゾチックなオーラを発しているのが、仏蘭西料亭「霧笛楼」です。洋館、という雰囲気を纏った建物の一階には、お菓子のブティックとレストラン。 そして、アールを描く階段を上った二階でもお食事がいただけます。 二階のエントランス脇のプレートに自分の名前を見つけるのがちと恥ずかしい(笑)。
案内されたのは、八畳のお座敷。 隣の間とは、金箔を含めた艶やかな襖で仕切られて
まずは、付き出し「霧笛楼冬の風物詩 自家製サーモンフュメ」。
フュメとは”燻製”を意味するようで、オイルにしっとりとしたサーモンの身にほどよい薫香が添えられています。うんうん。
タルタルから溢れる海老の旨味をトップのブランマンジェの生姜風味が輪郭のあるものにする。
うんうん。さらに長いメニュー名は、「フランスヴァンデ産 地鶏もも肉とシチリアンルージュトマトのコンフィ 乾燥トマトソース 茸のソテーサラダ仕立て」。 水菜と身の厚いキノコのソテーを載せたコンフィの手前に印象的に佇むトマトは、メニューにpetit tomate “yokohama”とある。訊けば、「霧笛楼」では、地産地消となる食材を積極的に取り入れているそうで、このトマトもシチリアから取り寄せた種子により横浜で栽培されたものなんだという。ふむふむ。
4品目は、 「帆立貝のサッと網焼きと横浜カブのマリネ 緑胡椒風味 貝類のカプチーノ仕立て サフラン風味」。
海老、鶏、貝ときて続くお魚料理は、「仙台産ナメタカレイのソテー 日本のゴボウのリゾットと西洋ゴボウのソース トリュフの香り」。
そしてメインの一方の雄、お肉料理は、「仔羊のコートレット 黒コショウソース ポテトとカリフラワーのグラタン ブロッコリーの生ハムソース」。
ラムはやっぱりイイやね~。香りの強いラムとバランスしたフォンと黒胡椒のソース。うんうん。
よく「カツレツ」への転化が語られる「コートレットcatelette」は、この場合”骨付き背肉”という意味になるんだ。そして、デザートが「赤いフルーツとピスタチオ風味のアングレーズソース フロマージュブランのムースリーヌとバニラのグラスとハーモニー フィヤンティーヌ仕立て」。
赤いフルーツってなんだろね?やっぱり苺かなぁ、なんて話していたら、それはやっぱりイチゴとラズベリー。薄焼き生地を帽子にして、その間にチーズのムースとバニラアイスが隠れています。
チーズとバニラを重ねたところがキモかぁと思っていると、下地のソースにはラズベリーの酸味の間からピスタチオがふっと香るという仕掛けになってる。ほうほう。レモングラス、レモンバーム、カモミール、ボダイジュなどをミックスしたハーブティ
実は、観光地にありがちな風化したお手盛り料理だったら切ないなぁ、と危惧していたのだけれど、それは杞憂でありました。ま、お安くはないけどね。 異国情緒横濱をそのまま体現したかのような「霧笛楼」が供する料理は、横濱フレンチとも呼んでいるそうです。横浜近郊で栽培された野菜や相模湾の魚介を取り込んだフレンチということなのでしょう。
そんな「霧笛楼」の誕生は、意外や1981年。 明治の開港当時からここにあったかのようなエキゾチックな風格は、往時西洋の異人を相手にしていた「芸者ハウス」をモチーフにしたことに由来しているらしい。

「霧笛楼」 横浜市中区元町2-96 [Map] 045-681-2926 http://www.mutekiro.com/
column/02483
