
首都東京都区内をぐるっと一周、
取り囲むように環状に巡る山手線。
山手線(やまのてせん)が環状運転を始めたのは、
今を遡ること90年の1925年(大正14年)のこと。
東海道本線の起点が東京駅となったのは、
更に遡る東京駅開業の1914年(大正3年)のこと。
開業100周年を迎えた東京駅の丸の内駅舎は、
長い工事期間を経て見事に復元されたものね。
そして、東京駅の開業と同時に運行が開始されたのが、
当時の京浜線、現在の京浜東北線。

日比谷から銀座へと向かう晴海通りが潜るガード脇。
真上を走り抜ける青いラインの京浜東北線の車両。
他所のガード下と同じく、半円形を描く天井の通路となっているトンネルが、
名付けて「有楽コンコース」。
京浜線や山手線が走り始めて以降、いつ頃に今の設えになったのでしょう。
壁の箱文字は、YやKやSが毀れちゃってて、
それもまた旧さを印象づけています。
レトロな味をこれでもかと盛り付けた「まんぷく食堂」を横目に進めば、
短いトンネルをあっという間に抜けている。


其処もまだ昼なお薄暗いのは、
東海道本線や東海道新幹線の高架が上を覆っているから。
そんな有楽コンコースの銀座サイドにあるのが、
黄色い暖簾が目印の「慶屋」であります。


背が高くて座り難くもそれがなんだか気分な、
紅い座面の丸椅子が迎えてくれます。
暖簾の奥の下がり壁に並ぶ品札。

消費税率が変わってもそのままの変わらぬ風景とお見受けします。

向かって右手の壁に何気なく貼った張り紙には、こうある。
当店は、手打ちうどん・そば店です。立ち喰い店ではありません。
時間のない方は、御遠慮願います。
こふいふ、正に路面な立地だと、
駅そばのようにスっと注文してすぐさま立ったままズズっと啜って去る、
みたいなノリで立ち寄ろうとするひとも少なからずいるかもしれないけど、
そふいふ店ではないことは明らかにしておく必要があるのでしょう。
注文を受けたご主人は、タッパーに収めてあったうどんの束を取り出して、
そっと湯に投入する仕草をする。
既製の袋入りうどんや冷凍ものではないことが判ります。
街ゆくひとを眺めながらのんびりと待つ裡に、
お願いしていた「カレーうどん」が出来上がりました。

追加したコロッケの下には、
とろみの強いカレー汁が待ち受けています。
「慶屋」のうどんは、
初めて見たときは少々意外な面持ちになったほど、細めのもの。

稲庭と似ているようでいて、そこまでは細くない。
最近知っておウチで美味しくいただいている乾麺、
「田奈うどん」に近い形状だけれども、
此方のは、生麺ということもあるのか、より柔和で柳腰な仕立て。
カレー汁がよーく絡んで持ち上げます。

「カレーうどん」には、デフォルトでご飯がついてくる。
お約束の流れに従って、どんぶりにご飯を投入します。
そうすると益々、カレー汁が強いスパイスや醤油の濃さを避けた、
優しい仕立てであることが判ります。
夏のとある夜にも黄色い提灯が点ってる。

品札の並びには、冬場には外されるメニューがふたつほどある。
そのひとつが、夏場の話題メニュー「冷やしカレーうどん」であります。

冷たくサラサラとしたカレー汁に、
醤油出汁を凍らせたシャーベットが浮かんでる。
油脂を多く含むつゆではこうはいきません。
そこへ冷たくシメた麺を浸していただけば、
頭に昇った暑気も束の間退こうというもの。

細麺は、こうして盛りうどんにするのもよく似合う。
背景には、銀座の街の灯りがカラフルに点滅しています。
有楽コンコースの入口の暗がりに、
名物カレーうどんの店「慶屋」がある。


ご主人に店名「慶屋」の由来を訊ねたら、
「そんなに難しいこっちゃないよ」と笑いながら話してくれた。
ご主人がキクチさんで、その頭文字KからK屋、転じて「慶屋」としたんだそう。
成る程、姓をそのまま使うより断然、目出度くて表情のある店名になりましたね。
店名を名付けたのは、いつのことなのかも訊ねればよかったな。
「慶屋」
千代田区有楽町2-4-11 [Map] 03-5222-8262
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