その銀座マロニエ通りの昭和通り寄り。
そっち方面の趣味がないので利用したことはないけれど、ウインズ銀座の辺りと云えばピンと来る諸兄諸姉もおられることでしょう。
ぼっこり空が開けた松坂屋の跡地が象徴する銀座の再開発は、取り壊しとなる新聞会館ビルはじめ、この近辺のあちこちでも旧来の姿を失くそうと牙を剥いています。
そんな界隈にあって、
ずっとおよそ同じ佇まいでそこにいてくれているのが、
中華そば「共楽」であります。
狭い間口に設えたカウンター。お冷のグラスをもらって佇んでいると、
その横を色々なひと達が通り過ぎてゆきます。
ご註文の基本は勿論「中華そば」。
店内に漂うのは、
このスープが煮出すにおひと仄かな麺のにおひ。ラーメンスープの従来からの基本形のひとつと思しき、
煮干しや鶏がら、野菜などを丁寧に煮出した様子のスープ。
醤油が勝ち過ぎることなく、旨味と酸味と甘味を添えていて、
安定感がふつふつと漲る、そんなスープだ。
カウンターは、奥へ行くとさらに狭くなって、
背後を通れないくらいになるので、
そんな時には左手のテーブル席へという手もある。
閉ざされたシャッターの内側で、
どんぶりの到着を待ちましょう。
ちょっと奢った註文は、
「わんたんめん」に「竹の子」。いつか「チャーシューわんたんめん」に、
「竹の子」に「生たまご」などと気張ってしまおうかなんて、
一瞬考えて可笑しくなりました(笑)。
「共楽」の竹の子は、
石川町の「奇珍樓」のそれとは対極の、
ちょっと煮〆たような細めのタイプ。これもまた老舗「共楽」の個性なのだけど、
もちょっと歯応えがあるのが好みかもしれません。
そして「共楽」の麺。加水の低い様子にして、ちょっと揉んだ感じの中太の麺で、
にゅるっとしてさくっとして、
そんな歯触りが心地よいヤツなんであります。
自家製なのでしょか。
夏場には「冷やし中華」の札が妙に誘ってくる。
「共楽」の冷やし中華のタレは、
一見するところ塩タレであるかのような淡い色。
あくまでもあっさりと食べさせたい。
でも、あっさりばかりじゃナンだよね。
そんな気持ちが伝わるような、そんな器をしばし見遣る。水に〆てきゅっとなったよな麺は、
刻んだチャーシューと一緒にみるみるなくなってしまいます(笑)。
1956年創業と、疑いなく老舗と呼べる中華そば「共楽」は、
今も銀座の片隅にある。炒飯なんかもあったら嬉しいなぁなんて思うこともあるけれど、
職人顔が凛々しいオヤジさんにそんな余計なことを口走ったら、
頭ごなしに叱られそう(笑)。
中華そば専門店としての矜持が滲む「共楽」では、
そんな邪道を求めることなく、時折寄り道したいものです。
「共楽」
中央区銀座2-10-12 [Map] 03-3541-7686