そのまま植物園に沿って南下すると、 何時ぞやお邪魔した武蔵野うどん「茂七」の小さな暖簾が見えてくる。 L字カウンターの様子を横目にしつつ、更にその先へと下ります。
通りが立川通りと交叉したところが小川橋。 その小川橋が渡るのは、玉川上水の流れ。 橋の横手に「清流の復活」と題する案内板が立てられてる。
案内板によると「玉川上水」は、 今から凡そ360年前の承応2~3年に江戸の飲料水供給のため作られ、 飲料水以外にもかんがい用水、水車の動力として、 武蔵野の開発に大きな役割を果たしたが、 新宿西口にあった淀橋浄水場の廃止に伴って、下流域では水が途絶えていた。 それが、都の清流復活事業により蘇ることとなった、とある。歴史ある上水路なんだなぁと改めて思いながら、 上水に沿って緑道を辿ります。
と、突然現れた「森田オープンガーデン」への誘い。沢山の枝葉を盛った門から細長い通路が奥へと続いています。
その先は、なんとも素敵なお庭になっている。 色鮮やかな秋桜が咲き、 陽射しを浴びた蜜柑が緑から橙に色を変えようとしています。 「キッチンガーデン」と名付けられたスペースには、 パラソルや椅子テーブルが置かれていて、そこでの食事風景を思わせています。
蒼い朝顔がこんもり咲いた棚の下にも緑に囲まれたテーブル席ある。その奥の家屋に近づいてみましょう。
ベランダ側を覗くと其処にも庭に面したテーブル席が設えてある。こうして自然と触れ合う気満々のお宅が、 この日のおひる処、めん処「松根」であります。
こんにちは、と訪ねた店内は、テーブル3卓にカウンター。硝子越しに麺打ち場が覗けます。
お庭の席は開放していないのかなと思いつつ、 眺めるメニューには、「糧うどん」に「鴨汁うどん」「肉汁うどん」。 温かいものでは、「かきあげうどん」や「鴨南蛮うどん」「肉南蛮うどん」。 「うどんランチ」に、それぞれそばもできるようです。
ご注文はやっぱり「肉汁うどん」を大盛りで。 大きな釜で湯掻く様子を眺めながら、のんびりと待ちましょう。
お待ち遠さまっ、と女将さんが届けてくれたお膳。四角い笊の頂には、いつも所沢「たつみや」名物の”はじッ娘”を思い出す、 うどん生地の耳が載っています。
武蔵野うどん正統の小麦粉、 埼玉県産農林61号で打ったといううどんの艶は力強い。 “糧”をつゆに仕込んだとも云えそうな、 鹿児島の黒豚を含んだ具沢山のつゆにどっぷり浸し、 少し急くように啜り上げる。 うんうん、この位の噛み応えとつゆに引き出されて漂う粉の風味旨味。 佳いではありませんか。
そして、此方では最後にそば湯を供してくれるところも面白い。武蔵野うどんのお店では、 出来ればうどん一本槍でいてくれるとより専門店の風格が増していいのだけどなんて、 勝手なことを考えているのだけれど、 こうなるとお蕎麦も供しているお店も悪くないなぁなんて思ったりもいたします。
玉川上水の緑道に連なる大きな庭に囲まれて、めん処「松根」がある。女将さんが20年程前に、 「武蔵野手打ちうどん保存普及会」なる会(知らなかった!)に入会して、 うどんの打ち方を会得、一念発起して開くに至ったというお店「松根」。 屋号「松根」は、女将さんの姓そのままだそう。 帰り際、女将さんに「農林61号はもう入手し難くなっているようですけど…」と訪ねると、 農林61号の粉は、あと二年分ほど製粉所で備蓄があるのみだと云う。 政府の方針で、「さとのそら」という銘柄への移行が促されていて、 補助金がなく、熟期が遅く、倒伏しやすく、歩留まりが二割ほど低い小麦は、 作られなくなっているらしい。 仕方のないことなんでしょうかねぇ。 お店の目の前に広がる森田ガーデンは、お店の大家さん。 森田農園で採れた無農薬野菜たちの天麩羅もいただきたかったな。
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「松根」 小平市小川町1-423 [Map] 042-345-2116 http://www3.ocn.ne.jp/~men2116/
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