ところがある日、平成通りの交差点で信号を待っていると、 その斜向かいに「歌舞伎そば」と謳う暖簾を見つける。 ああ、なぁんだ、こんなに近くにあったのね、ここも住所は兜町なんだと気がついて、 早速その暖簾を潜ります。 歌舞伎座の店と同じく、券売機でポチとするのは、「ざるかき揚げそば」。 ぐわぐわと沸く湯殿のすぐ脇に陣取ります。ここ兜町店でも、一家言ありそうな風格のオトーサンたちが賄ってくれているのだけれど、麺を湯から上げたり、かき揚げを揚げたり、載せたりする所作に”あの”リズムは感じられません。 至極当然のことであるのにちょっと残念にも想ったり。 歌舞伎座のオヤジさんが膝でつくるリズムは、「歌舞伎そば」そのものと一体のものになっているのが改めて判ります。 「かき揚げ」追加トッピング&大盛りの「ざるかき揚げそば」が目の前に届きました。割った掻き揚げを綺麗に蕎麦の廻りに配した様子は、歌舞伎座の店に負けぬ壮観さ。 辛汁につつっと浸してずずずと啜る。掻き揚げも辛汁につつっと浸してサクカリっと齧る。 うん、うまい。 辛汁の加減も甘過ぎず辛過ぎず、そば自身の風味旨みを上手に盛上げてくれている感じ。そこへ掻き揚げされた野菜の甘さと油のコクが追い討ちを掛けて喜ばすのであります。
歌舞伎座のお店ではいただいたことのなかった、 温かい汁の「かき揚げそば」もいただいてみました。そうか、どんぶりに載せるのだったら掻き揚げを割らなくっていいンだよね、とそんなことを考える自分が可笑しい(笑)。 かえしを妙に主張させず、素直に出汁を活かそうとする、意外と丁寧な甘汁。 そこらの立ち喰いと並べて考えてはいけません。
11年の年明けに開店した「歌舞伎そば」の兜町店。歌舞伎座の大将が刻むリズムはないけれど、 此処でも変わらぬ「もりかき揚げそば」がいただけます。 口 関連記事: そば「歌舞伎そば」で ざるかき揚げ場所は変われどあの芸な所作(10年12月)
「歌舞伎そば」兜町店 中央区日本橋兜町16-4 島田ビル 1F [Map] 03-5695-3701 [閉店]
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