促がされるまま座ったカウンターから振り返ると、 店の中には小上がりを覆うようにさらに屋根がある。長押には千社札仕様の弓張り提灯が並べられて、 浅草に似合う”江戸”な雰囲気が存分に漂います。
あれこれ悩んで結局、「シチューとサラダの店」と看板にあったものなぁということで、「タンシチュー」をお願いします。 幾つもの手鍋に準備されたデミソース。 目の前の厨房の五徳には、鉄鍋が載せられて、ぐつぐつに向けた加熱が始まりました。
鼻先を擽りはじめた匂いからしてもう、鉄鍋の到着が待ちどうしい(笑)。 熱いのでお気をつけください、とお待ち兼ねの鉄鍋がやってきました。 うん、みるからに旨そう。 杓文字で鍋の蓋に取り分けて早速、どれどれとそのソースを舌に載せれば、 うんうん、動物系と野菜系の旨みがベタつくことなく真っ直ぐに沁み入るように迫ります。いいね、いいね。 ライスではなくと、なんとなく選んだ「トースト」がヒット。 しっかり厚切りを香ばしくフライパンで焼いたトーストは、中がもっちり。 そのトーストとシチューとを交互に口に運ぶ、嗚呼、至福のひと時(笑)。
もう「カキフライ」の時季は過ぎてしまったけれどと思いながら、ふたたび浅草一丁目。 佇まいは小料理・居酒屋風なれど、コック帽のお三人が居並ぶ光景は正しく、洋食屋さんのそれであります。 SuperDryしかないのが残念なものの、「ポテトサラダ」あたりで瓶ビールをやっつけつつ、ひと心地。 続いて、「生姜焼き」をセットでお願いしました。オカアさんが届けてくれたのは、バラ肉系の生姜焼きとは明らかに違う端正な表情のお皿であります。 特筆するべきは、その盛り付けにもあり。 横から見て気がついた、生姜焼きロースが二階建てになっているのです。仕立ては、生姜の風味やや抑え目のあっさり系。 リングイネのケッチャップ麺もしっかり添えられています。 勿論、ジンさん&ナポさんも実食済だ。
昭和11年総創業、浅草平和横町の老舗洋食「ぱいち」。オカアさんに、何故に「ぱいち」なの?と訊くと、 言い終わるか否かの即答で、「一杯の逆さま、ね」。 それを聞いていた当代のご主人は、お祖父さんの時にとんかつなどの揚げモノやオムライスなんかの洋食屋にしたらしいです、と補足してくれた。 元々は、一杯呑み屋だったようです、とも。 その頃から俗に、一杯呑みに行こうぜというのを”パイチ”と業界用語チックな用い方をしていたらしい。 浅草が古くからの芸人の町であることも関係していそうで興味深いね。 「杯一」という呑み屋はあっても、「ぱいち」と表記する店は恐らくここだけだ。 口 関連記事: 柳麺・餃子「あづま」で ほろ酔いで啜るDXラーメンDXの謎純の謎(06年05月) 中華そば「つし馬」で 青森煮干の中華そばと特濃バリ煮干し旨し(09年11月) 蒲焼「小柳」で 極薄い外周とふんわり身が解ける鰻重の旨さ(07年08月) とんかつ「ゆたか」で 牡蠣フライ的フォルムのひれかつ定食(07年05月)
「ぱいち」 台東区浅草1-15-1 [Map] 03-3844-1363
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