
旗の台界隈で、まず初めに名前があがるであろう飲食店は、例えば、ころうどん「でら打ち」とか、若鳥焼き「鳥樹」あたりか。
昭和大学へと向かう旗の台東口通り商店街から脇へ反れた 「でら打ち」のある通りにもカジュアルイタリアンや長崎料理の店、もつ焼き居酒屋などがぽつぽつ並んでいます。
踏み切り前にあったラーメン屋は疾うに建て替わっていて、その先にあった焼鳥屋も店を閉めていました。
都心でもどかっと本格的に雪の降った2月半ば。

旗の台の裏通りを歩けば、急に雪国のどこかに紛れ込んでしまったような錯覚を覚えるようなこともありました。
そんな夜にも目に留めていたのが、焼鳥屋があった場所。
煙に燻された焼き鳥屋の雰囲気とはちょっと違う、
小奇麗なファサードが気に掛かります。
初めては、窺うようにドアを開けると、
顔を上げてカウンター越しにいらっしゃいませの目線を送ってくれる男性がひとり。
そのままカウンターの中程に腰掛けます。
ほぼ居抜きとも思える店内は、上手に手を入れることで元焼鳥屋の匂いを一掃しています。
エビスのスタウトもいいけれど、とお願いしたのがご存知「シャンディ・ガフ」。

鮮やかかつ柔らかな生姜の辛味風味は、ウィルキンソンかもしれません。
口開きになにか、と考えつつメニューを辿って見つけたのが、
「聖護院大根のポタージュ」。

じゃが芋でも玉蜀黍でも南瓜でもなく、
聖護院のポタージュかぁと思うと不思議に嬉しい(笑)。
どれどれとスプーンを食むと、なるほど柔らかなテクスチャの中からまさに聖護院大根の風味がする。
うん、やっぱり嬉しい。
グラスの白をいただいて迎えたのは、「えいひれのムニエル」。

檸檬をほんの少々搾り振って、フォークの先を伸ばします。
ああ、カリサクと揚げ焼いた皮目に香ばしきバターオイルが定番なれども絶妙に旨い。
その一方で、皮目の下の白い身がほっこりと甘くて、びっくり。

そして、えいひれのエイヒレらしいところはというと、期待通りのポキッとした歯応えと所謂エイヒレの滋味。
いい、お皿であります。
別の夜には、グラスのビールを「いろいろな豆のサラダ うずらの目玉焼きのせ」でスタート。

オリーブオイルとパルミジャーノと塩胡椒と小さな玉子の黄身とでカラフルに映る豆たちがイケるサラダに昇華しています。
何か揚げた感じのヤツが食べたいなぁと選んだのが「むぎいかとふきのとうのフリット」。

蕗の薹の苦味ってやっぱり大人な美味しさだよなぁと今更ながら感心しながら、
胴の輪切りをみても小さ目と判るムギイカリングの甘みを愉しみます。
メニューに載るパスタの項を覗いて、ひとりどよめく。
それは、「特製ナポリタン」なんてメニューを見つけたから。
ナポちんの表情を思い浮かべつつ早速告げたオーダーに応じて、
炒める音が聞こえてきます。
届いたナポリタンは、やや細麺なれど、
じっくりじっくり炒めたことによってケチャップ的ソースがまろやかに濃度を増していて、
正直云って、旨い。

使っているのはBarillaのスパゲッティ#5あたりかな。
アルデンテの気配のするナポリタンでも美味しくできるのだねー。

喫茶店的ナポリタンとはちょっと毛色が違うけど、ナポちんはどんな風に評するかな。
旗の台の片隅でセンスと個性を発揮しはじめているkitchen and bar「tocotoco」。

どうやら、界隈の飲食店がそうであるように、
昭和大学病院の関係者と思しき客が常連になりつつある様子。
訊けば、六本木の某店から独立して、今はひとりで切り盛りしているのだそう。
店の名の「tocotoco」は、いつも気軽にトコトコ歩いて来てね、で”トコトコ”だ。
「tocotoco」
品川区旗の台2-5-2
[Map] 03-3786-3347
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