
その先まで暫く利用しないうちに、
高架化が進んでいた中央線。
降り立ったのは、東小金井駅。
東小金井の駅を北口へ出るのは恐らく初めてのこと。
意外なほど殺風景な駅前から真っ直ぐ北上。
東京電機大の付属高校脇の歩道では、
桜並木がその蕾をほころばせていた頃でした。
目的地はその先を右へ折れた静かな静かな住宅地。
さらに折れ入った道の奥に一本の幟を見つけました。
幟目掛けて進むと、その右手の門の前にも同じ幟が風に揺れる。


どうやらこの、民家然とした建物が手打ちうどん「へそまがり」の所在のようです。
こんにちは~と囁くようにしながら玄関を入ると、
厨房らしき部屋から「いらっしゃいませ、奥へどうぞー」という女将さんらしき方の明るい声が聞こえる。

促がされるまま立ち入ったのは、落ち着いた風情の板の間でありました。
炬燵があるのもいいなぁと思いつつ、ひとり客はカウンターの隅へと収まります。
その脇の窓越しに拝めるのは、竹林。

風にざわざわと揺れるのが伝わってきます。

ひるからだけどちょっと呑んじゃおうという気分になって、お銚子をいただきます。
それにはなにかなとお品書きを散策。
手元の品書きからを顔を上げて、壁に貼られた品札から「牛すじ煮込み」を。
「ごぼうこんにゃくぴり辛煮」「マヨきゅうり」「揚げなすみそ」「なめこどうふ煮」と、
素朴ながらも気持ちを擽るラインナップが好ましい。
やってきた「牛すじ煮込み」は、そんじょそこらの煮込みとはやや趣を異にして、
じっくりと深い旨みのこくがありながら、どこか品のいい佳肴。

オヤジさん、やるなぁ、オヤジさんが凝り性の酒好きであることは間違いありません(笑)。
これからいただくうどんの合いの手にもいいかと、「野菜天ぷら」。

カラっとした薄衣の歯触りと脱水の旨みに引き摺られ、お銚子のお代わりをしちゃいます。
ちょうどお猪口の滴がなくなった頃に、この日の真打ちがやってきました。
所望していたうどんは勿論、「肉汁うどん」。

長手の盆には、うどんを盛った笊に肉汁の器に薬味の小皿。
薬味にほうれん草のおひたしがあるところに、所謂”糧”を想います。
うねるように綺麗な表情のうどん。

豚肉片なぞと一緒に啜れば、
しっかりと量感のある歯応えと見た目通りのつるんとした口元の感触。
オヤジさんが丁寧に念入りに足踏みして鍛える様子が脳裏に浮かんできたりして。
粉は、埼玉や山梨など、三種類のブレンドだそう。

如何にも地粉の風情のするうどんではないけれど、
武蔵野うどんの一派と捉えていいのでしょう。
小金井の住宅街でひっそり営む、手打ちうどん「へそまがり」。

ご主人に店名の訳を訊いてみた。
へそ曲がりだから、とそういうことかな、と思ったら、まさにそのまんまのお応え。
店を開くと友達連中に告げたらば、
お前はへそ曲がりなのにそんな客商売勤まるのか、だとか、
お前の店なら”吹き溜まり”なんてどうかとか、色々と好き放題云われたらしい(笑)。
ところがご主人、なにか得心するところがあったのか、それこそへそ曲がりだからか、
友達の謂いをそのまま店名にしてしまったのだそう。
“へそ曲がり”には、素直ではないが故にどこか拘りのある、
反論を持つが故に持論に至るまでこっそり努力するような人もイメージできるものね。
「へそまがり」
小金井市梶野町4-10-29
[Map] 0422-54-6607
column/03127
まさぴ。さま。
ものすごく、迷いそうな、ものすごく、綺麗な場所にあるのですね。
そば屋で酒、は長年の夢でしたが、うどん屋で酒という新境地があるとは!!動揺します。
ちょうど絶品いなにわうどん乾麺がなくなってしまったところにこんなに美味しそうなうどん記事><
行きにくそうなところがまたいいですね。。
Re:laraさま
通りすがりに寄るようなことは絶対にないところ。
趣味が高じて、住宅地の奥にある自宅改造しちゃったのでしょーね。
気の利いた肴があれば、うどん屋で一杯というのもオツなもの。
でもまずは、手元にふたたび乾麺を、かな(笑)。