
鰻と云えば静岡の代名詞のひとつ。
三島も鰻で有名だって知ってました?と訊かれれば、
うん、でも、正直云って当地ではいただいたことがない。
それではその片鱗に触れてみましょう、ということで乗り込んだひかり号。
品川から37分で到着したホームからは、しっかりと雪を頂いた富士山が望める。
富士の裾野エリアを訪れているという臨場感に「ほぉ」と牽かれる瞬間だ。
いつ以来だろう、随分と久し振りに降り立った三島駅前。
駅舎を背にして、路線バスが信号を待つロータリーを進む。
すると正面に見つかる三角屋根を壁に模した店。
二階の壁に大きく掲げた木札には、「しらす」「桜えび」「近海魚」「生そば」、そして「うなぎ」。

早速こちら、お食事処「源氏」にお邪魔してみましょう。
時刻は、正午に30分ほど前。一階の客席は既に賑わいをみせているね。
昼間っからビールを呑んじゃう気分満点(笑)なので、品書きの「うな重」を横目に「蒲焼だけってできますか」と訊いて、そのように。
届いた鰻の飴色をじっと眺めてから、箸の先でひと口に千切って口元へ。


やや甘めでちょっと粘性のあるタレに包まれつつ、ひと切れがすっすと消えていく、そんな感じ。
プレミアム・モルツのぐっと華やぐよな香りとの取り合わせもいい。
さてご飯モノもいただいちゃおうとお願いしたのが「うなぎ釜めし」。
鰻の釜飯を口にするのはおそらくお初だ。
たっぷりの錦糸玉子の下に並ぶ蒲焼。

その下のご飯の色合いが濃いめなのはもしや鰻のタレを含ませて炊いているからなンだろうかなどと想像しながら、まだ熱いひとり羽釜に箸を伸ばします。


いただく印象は、ふっくらと軽やか。
厭な脂も勿論くさみもなく、すいっと食べれて気がつくと、もうなくなりかけている。

底の方から改め杓文字で掬ったおコゲと鰻の名コンビ(笑)。
ご馳走さまをして目に留まった、店頭ではためく幟には「三島うなぎ横町」とある。
「三島うなぎ横町」とは、三島のうなぎをもっともっと遍く広く知ってもらいたいという活動のことで、
三島駅南口から三島広小路を中心としたエリアを気をつけて歩いてみると、
同じ幟がいくつも見つかる。

三島で鰻を食べたけりゃ、この幟を目指して店を訪ねればいいンだ。
あ、でもそう云えば、三島産のうなぎ、というのは聞いたことがないよね。
三島のそこここに養鰻場があるわけではなくて、
では市内の河や池で川鰻が獲れるのかというと、天然鰻が希少なものとなった今では、それも概ねないよう。
なのになぜ鰻料理を供するお店が比較的狭いエリアに多くあるのかというと、その秘密はさっき新幹線のホームで拝んだ富士山にあるのだという。
富士に降った雪や雨が年月をかけて浸透し、伏流水となって湧き出すのがここ三島の地。
例えば、三島ゆかりの文学者たちの句碑「水辺の文学碑」が立つ桜川は、菰池公園の湧水池を源流としているそう。
そして、富士山の伏流水は、分子が小さく酸素を多く含んだ所謂活性水だという。
鰻をその伏流水に晒すことで、鰻が持つ生臭さや泥臭さを消し、水の持つ活性が美味しさの素である蛋白質を保ちつつ余分な脂だけを落とす働きをするというのだ。
伏流水で活性した三島のうなぎ。
釜めしのうなぎが軽やかに感じたのは、そんなことが背景にあるのかもしれないね。

「三島うなぎ横町」の一店、お食事処「源氏」は、なにせ駅南口の真正面。
伊豆箱根鉄道の改札からもきっと見つかる。
修善寺や伊豆長岡からの温泉帰りにすっと寄って、三島のうなぎ、ってのも一手です。
口関連サイト:
「三島うなぎ横町」の14店を紹介している、サントリーグルメガイド「静岡うなぎ特集」
「源氏」 静岡県三島市一番町15-22
[Map] 055-975-0882
http://www.genji3.jp/
column/02748