御池の大通りから再び麩屋町通りを辿ります。
鮨屋、うどん屋の暖簾を横目に進み行き着いたのは、
以前「はふう」にお邪魔した時既に認めていた「波波」さんです。
朱色の扉の脇の格子には、「活あいなめ」「天然桜ます」「いさざ踊りぐい」と筆の文字
。
旬の鮮魚に対する拘りと自信の程が、その表情にも顕れているようです。
予約の名を告げ、カウンターの中央へ。
まず喉を湿らす麦酒は、アンバーエールな京の地ビール「京都」。
余にそのまんまなラベルのこの「京都」だけれど、中身は北山の羽田酒造という酒蔵が限定的に作っている「周山街道」という地ビールだそうだ。ビール酵母が生きている謂わばナマモノで、賞味期限はこの日の三日後になっている。“活き”のいいビールってのもあるもので(笑)。
卓上のお品書きを見るまでもなく、壁や幕板一面に貼られた半紙でまた、こちらのお店の意気が判っちゃう。
お造りにするもの、焼もの煮つけ、貝類に京野菜。天ぷら、そして乙な酒肴たち。「くえ」にはしゃぶしゃぶなんて文字も添えられているね。ううう、お足が足りません(大泣)。
「すべて天然もの」と書かれたこの日のお造り
の中から、「つばす」を選んでみました。
「つばす」とは、関西で呼ぶところの鰤の幼名だそうで、つばす→はまち→めじろ→ぶり、と出世するらしい。
最初に出された醤油はたまり。とろんとした醤油の甘さがつばすの若い脂の甘みを包むようにして悪くはないなぁと思っているところへ、「別の醤油、だしましょか?」と大将。
比べるように試すと、やっぱり濃口の醤油の方が刺身自信の味わいを引き立てる。どうだとばかりに脂ののった鰤ももちろん大好きだけど、こうして品のある甘い香りのお造りも、どうして、なかなか。
季節の野菜モノ
からなにかと探って、「えびいもまんじゅう」。
薄色のあんから顔を覗かせているまんじゅうへと匙の先を割り入れると、えびいもらしいふっくらした色合いがこんばんは(笑)。出汁の利いたあんと絡めいただけば、揚げた外周とえびいものほっこりした甘さと出汁味と。思わず目を閉じて、しみじみ味わってしまうのですなぁ。
正面の硝子ケースを睨み付けながら、実は狙いを定めていたのがその脇に小さく“珍しい”と書かれていた「やがら煮付け」。ところが、「さっき出ちゃって、仕舞い」だという。うーん、残念。
然らばとお願いしたのが、「黒めばるの煮付け」です。
黒い皮目に隠した淡白で繊細な白身を上品な味付けの煮汁に浸していただくと、動かす手と口が止まらない。すっと控えめな味わいなのにあとをひく、そんな感じがいい。
目の前に貼られた半紙を眺めるのも酒の肴になるようで(?)、お銚子を調子にのって空けてしまう。訊けば、その半紙の味のある文字はすべて大将の板井さんが書き上げたものなんだって。
なんだかできあがってしまいそう(笑)なので、〆にと「鯛茶漬け」。
あのね、これがね、もう、陳腐な表現だけど、佳品絶品。
皮目を炙った鯛の身へとたっぷりとひいた出汁を注いで、少し反り返った身を解しつつ、ズズといただく。品のいい皮目の香ばしさと白身から滲み出る脂の魅惑がふくよかな出汁の旨味と渾然となって、うん、いい、うん。
思わず大将に、「いままで食べた鯛茶の中で、う~ん、一番!」と告げてしまう。
胡麻だれをお茶で洗っちゃう感じの鯛茶にはどうもしっくりいかないところがあって~なんて話していると、「京でも胡麻ダレの鯛茶は多いですけど、これはこの時季の鯛だからってところもあるかもしれませんね」と仰る。なるほど。でもでも、いやはや、記憶に残る鯛茶をありがとうです。
静かな静かな麩屋町通りに佇む「波波」は天然活魚めくるめく。
またお邪魔します、必ず。
口関連記事:
肉専科「はふう」 でエッジなタンシチュー舐めるデミソース(08年03月)
「波波」 京都市中京区麩屋町二条下ル尾張町231麩屋町二条ビューハイツ1F 075-211-5073
column/02555
あれ、、、まささん京都にいるんですか。。。
美味しそう・・美味しそう・・特に鯛茶~!!
Re;あんど。さま
鯛茶、よかったです。旨かったです。懐具合の心配一切せず、もっとあれこれ食べちゃいたかったの京都でしたー。