人形町の裏通りに何気なく佇む天ぷらの「中山」さん。
3代に亘るお店のようです。
2階の物干し場には幾つもの洗濯物が風に揺れていました。
正午ちょっと前。
引き戸を引くと、読んでいた新聞を折り畳むオヤジさんの様子が目に留まりました。
先客はなし。
入ってすぐのカウンターで「天丼」をお願いしました。
どことなく、「あいよっ」ってな勢いが語り口に感じられて微笑ましい。
と、オカミさんが、揚げあがった天ぷらをズボッとステンレス容器に入ったタレに浸して引き上げる。
えええっ?黒く滴ってる…。
そして、蓋を載せたどんぶりが「おまちどうさまー」と手渡されました。
そもそも他所から店屋物とってる訳ではなくて目の前でいただこうというのに何で蓋が必要なのか、やっぱりよく分からない。
蓋を外すときの臨場感のために蓋を被せているってことでもないだろうしなー。
その蓋をすぐさま開けると、ドス黒いタレに彩られ、くた~っとなりはじめた天ぷらが見付かりました。
ああ。
継ぎ足し継ぎ足しされた、俗に云う秘伝のタレかと思われた黒い液体は、醤油のカドも丸まっていない程こなれていない。
エビ食べても穴子食べても、ほぼ同じ味がするのは、間違いなくそのタレのお陰のようです。
ああ。
下町風天丼って、つまりはこういうこと、ではないですよね。
「天丼」という選択が間違っていたのか。切なくも残念であります。
「中山」 中央区日本橋人形町1-10-8 03-3661-4538
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