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そばきり「すゞ木」で十割そば膳初孫に前菜史上最高そばがき蕃茄冷やかけせいろ蕎麦

日頃お世話になっている西武池袋線。
ただ、池袋からは急行に乗ることがほとんどなので、途中下車することは案外多くない。
コロナ禍になってからは、ラビュー号をちょくちょく使うようになって、ますます沿線の街に降り立つ機会が減ってしまっていました。

そんな中ふと思い立ったのは、
ずっとずっと気になっていた、
練馬のそばきり「すゞ木」への道程です。

炎天下の保谷駅を南口に出て、
農産物の直売所を冷やかしてから東進する。
広々とした庭に大きな遊具や広い砂場がある、
そんな幼稚園を横目に住宅地を進む。 するとその先に「すゞ木」と示す、
四角く小さな突出看板が見えてきました。

アプローチに足を踏み入れると正面に、
営業する4曜とひるのみの営業時間が手書きされた、
木製のプレートが目に留まる。 その脇には、ご予約でそば終了、の文字。
やはり此方にお邪魔するには予約が必須のようです。

決して華美でなく、しっとりと落ち着いた店内。
壁の掘り込み棚にはそれぞれに花が活けられている。 ふと見上げれば、横框にも見える部材が、
飾りの桟のように誂えてあって、
笊に載せた草木をそっと活けてある。
実に奥床しいではありませんか(^^)。

大振りのテーブルの隅には、
脚部に彫刻を施したランプが燈る。 背面の大谷石の仕切り壁の上には、
アンティーク調の椅子のミニチュアが、
何気なく飾られています。

「すゞ木」のメニューは、
前菜にそばがき、
そして、せいろ又はかけのそばによる、
「十割そば膳」のみ。
冬場は所謂かけ蕎麦ですが、
夏場は冷やかけとなる。
追加の対価をもって、
そばの二種を半々にもできる。
然らばと、そば二種半々にてお願いします。

前菜に合わせて冷やのお酒をいただく。
幾つかの候補から選んだ銘柄は、
山形は酒田の「初孫」生酛純米吟醸。 丁寧に煮つけた里芋や酢漬けた玉葱に青菜。
ちょっとツマむに加減のいい前菜たちだ。

厨房から届くガコガコした音が止んだ後、
湯気と共にそばがきが届く。 ふっくらした味わいとともに蕎麦の香り。
ほんのりした旨味と甘味が混然となって、
とっても美味いことに、ハッとなる。
自分史上最高のそばがきかもしれません(^^)。

この日の冷やかけは、「トマトの冷やかけ」だ。 清らかにしてふくよかな旨味のかけ汁。
繊細に映る蕎麦切りは、
どっこい力強く縒れることなくすっと口に届く。
心地よくも美味しい。
さっきまで体の芯に抱えていた暑さが、
すすっと引いていきます。

続いて、お約束のせいろの笊が届く。 改めて笊の蕎麦を見ると、
このどこか凛とさえしているような繊細にして、
エッジの立った力強い蕎麦を十割で打つなんて、
なかなか至難の業なのではないかと思えてくる。

辛汁は辛過ぎず濃過ぎず、
出汁の旨味とかえしの風味のバランスがいい。 そば湯の最後までゆるゆると堪能しました。

お会計を済ませて暖簾をくぐると、
終了しましたの木札。 ご馳走さまでした。

まだまだ農地も広がる練馬は保谷最寄りの住宅地に、
そばきり「すゞ木」は、ある。 マンション一階の一角を蕎麦店に設えたご様子だけれど、
その内装やエントランス周りのセンスには好感しかない。
週に4度のひるのみの営業ゆえ、
予約のタイミングを図りつつ、またお邪魔したい。

「すゞ木」
東京都練馬区南大泉4-43-32 [Map]
03-5387-2010

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