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おそば「八丁堀あさだ」であの茶蕎麦天もり力蕎麦冷やしたぬき新天地の新川で

市場通りと鍛冶橋通りの交差点近く。
普通乗用車のみならずトラックや重量車輛も行き交う通りに面しているのに、そこだけいつも静かで穏やかな空気を醸して佇んでいたのが、おそば「あさだ」だ。
店先で揺れる笹の葉が涼し気で、飾らない蕎麦店らしいファサードが地味ながらも小粋だった。
若緑色した茶蕎麦を供することも特徴のひとつなのでありました。

この二月の初頭のこと。
仕事の所用で新川のとあるビルを訪ねた帰り道。
残念ながら閉店してしまったBrasserie「Iizumi」の隣、
嘗て酒邸 新川「FUKUSAKO」のあった場所が、
足場で囲まれていた。
何気なく近づいて建築工事の掲示を眺めてびっくり!
そこには「八丁堀 そば処あさだ様」建築工事とあったのです。

またまた再開発による飲食店舗の閉鎖を、
見送らなければならないのか。
そう思いながら、
まだ笹の葉の揺れる店先を訪ねるとやはり、
移転のための休業を知らせる、
拠れた貼り紙を見付けることになる。
閉店廃業ではないことに改めて安堵しつつ、
やっぱりこの佇まいは失われてしまうのだと、
とても残念に想ったのでありました。

店先で告知していた4月の移転先での新装開店は、
コロナ禍の影響で延期を余儀なくされた模様。
この6月になって漸く、白い暖簾を拝見するに至る。
手指を消毒して、
間引きされたテーブル席へと案内されました。

「あさだ」の蕎麦の人気な定番といえば、
やはり「天もり」「天ざる」。 例によって、海老か掻き揚げかを選べる汁。
綺麗な翠色の蕎麦は、そのまま健在だ。

その後ちょこちょこ通う際には専ら、
茶蕎麦の魅力をそのまま愉しめる、
「もり」「かけ」系なのだけれど、
時には温かい蕎麦もいい。 揚げ玉との相性が何故かバッチリな力のお蕎麦。
甘汁に多少ヤワっとしつつも、
ツナギしっかりの茶蕎麦も悪くない。

温かいお蕎麦と云えば、
葱背負ってくる鴨の南蛮という手もある。 鴨のロースがどんぶりを覆うような、
そんな鴨南ではないけれど、
そうそれが返って程よい気分なのです。

ちょっと悪戯な気分なおひる時には、
「カレー南蛮」なんて妙手もある。 折角の茶蕎麦が台無しやないけーと言われれば、
その通りなのだけど、
まぁ偶にはいいじゃぁありませんか(笑)。

盛夏の或る日、
品書きには書かれていないメニューが、
すんなりと厨房に通る様子を垣間見る。
知ってるひとは知っている、
真夏の隠れた人気メニューが、
「冷やしたぬきそば」だ。 正直に云うと「天ざる」よりもスキ(笑)。
通年メニューとして、
対応してくれたらいいなと思っています。

そして、盛夏のメニューがもうひとつ。 こうみえてお蕎麦、です。
女子ウケしそうな「サラダそば」だけれど、
野菜が足りない症候群のオジサンにもぜひ、
門戸を開いておいていただきたいところです。

おそば「八丁堀あさだ」は、
無事移転して今は新川にて盛業中。 「あさだ」の創業はなんと、
1892年(明治25年)のことらしい。
つまりは130周年も近い、
立派な老舗なのだということになる。
そんな老舗でも、
営んできた場所から退かなければならないのかと思うと、
やっぱり少々複雑な気持ちにはなるけれど、
身近に新天地を得られたことを、
ただただ喜んでいるところです(笑)。

「八丁堀あさだ」
中央区新川2-8-8[Map]
03-3551-5284

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