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鮨「はしもと」で青柳桜海老茶碗蒸し初鰹蛍烏賊鰯海苔巻春子鯛鮪剥し桜鱒鰆春の握り

洋食「448 LIBERMENT」のある小さな交叉点の向かい側。
マキプラザという事務所ビルの一階に鮨「はしもと」が開店したのは、2014年の師走のこと。
今は鮨「美幸」として引き継がれている「はしもと」さんに初めてお邪魔したのは、開店から3年も経った’17年の暮れのことでした。
その後、数度カウンターのひととなった頃の’19年の夏には、新富一丁目交叉点近くへ移転。
新しいお店に漸く伺うことが出来ました。

砥粉色の土壁としっかりとした巾木。
矢羽根に編んだ化粧を施した引き戸。
簡潔にして和食の店としての風格も漂わす。
知る人ぞ知る店に相応しいファサードが迎えてくれます。

8席のカウンターの隅に腰を据えて、
見上げる天井も矢羽根に編んだ網代張り。 カウンターバックの飾り棚が印象的に映ります。

麦酒をいただいて、
突き出しは走りの蚕豆。 そう、お邪魔したのは4月のことでした。

卓上への一投めは、
帆のピンと張った青柳と平貝。 平貝は敢えて縦切りにして食感を残している。
この時季だけという三重の青柳の甘さと香りに、
しみじみとしているところへ、
豊漁と聞く桜海老の茶碗蒸しが来る。
桜海老は炒って芳ばしく、
高級かっぱえびせん状態にしてから、
茶碗蒸しに仕込んでいる。

藁の香り加減よく、
ちょん付けした芥子の風味の似合う鰹は、
初鰹にして、いと艶めかし。 不思議な六角形の硝子の小鉢には、
これまた春の海の幸、蛍烏賊。
刻んだ蛍烏賊をしゃりと花山葵とで和えている。
こふいふ蛍烏賊、いいなぁ。

続いて、赤酢で〆た鰯の海苔巻き。 中には大葉、目葱、沢庵、ガリ、胡麻。
鰯そのものの香りと助演者たちの香りの競演だ。

芋の水割りをいただきつつ、珍味の皿。
その三品は、鮟肝、マカジキ、蛍烏賊の味噌漬け。
マカジキは、まるで生ハムの装い。
水分を抜いて、藁で燻して、熟成させている。 焼き物は、太刀魚の塩焼き。
その身はもう、ふわんふわん。
炭火あってこその焼き加減だ。

握りの前に届いた小皿のガリ。 その姿は切り揃えたフルーツのよう(^^)。

握りの口開けは、小肌。
〆加減は軽めか。 そして、昆布〆にした春子鯛は、
軽やかにしてほの甘い。
なかなか大振りの鳥貝は、
歯触り愉しく、実に美味しい。

ここから鮪二貫。
まずは、下田で揚がった鮪のハガシ。
頭に近い背中の皮際の部位の筋を剥したもの。
とろーんと解れてゆく感じのする。 もう一貫は、沼津の釣り鮪で、
血合いぎしの中トロ。
赤み強めの中トロは、香りや佳し哉。

北寄貝にはなにやら、
細かく包丁が入れられている景色。
お陰でふんわりと北寄貝の個性を味わえる。 桜前線を思い起こさせるは、桜鱒。
川魚のようなイメージもあるけれど、
淡水と海水を行き来するのが桜鱒であるらしい。
透明感のある鮮やかな緋色が印象的だ。

そして、大トロ。 間違いなく、旨い。
口にした途端、すっと解れ、融ける。

8名がゆったり座れるカウンター。
そのつけ台は、節もない一本もの。 橋本さんは幾らぐらいしたのか、
勿論口にはしないけれど(^^)、
絶賛改修中の名古屋城の天守閣の天板、
その材と同じです、と聞いているそう。

長崎の鯵。
巻き網の鯵は柔らかいと云うが、
なるほど柔らかでシャリとの一体感が増す感じ。 藁で燻した鰆。
淡泊にも映る鰆が藁で燻すことで、
俄然色気を帯びるのですね。

握りの最終コーナーは、
海老、雲丹、穴子。 ほの温かい海老の温度。
当然のような穴子のふんわり。
橋本さんの握りは、
最初はどこかシャリに愛想がないような気もするも、
食べ進むにつれてそれが自然と馴染むようになり、
絶妙なバランスの上にあることに気づく。
そんな印象があります。

蜆の味噌汁に玉子焼きで大団円。 満腹大満足、ご馳走さまです。
出来ればこのまま眠ってしまいたい(^^)。

平成通り新富一丁目交叉点近くに、
ひっそりと鮨「はしもと」は、ある。 季節が変われば勿論時季の旬やはしりのタネも変わる。
また別の時季の握りをいただきに伺いたい。
移転元の鮨「美幸」も気になります(^^)。

「はしもと」
東京都中央区新富1-8-2 grandir ginza east 1F [Map]
03-5541-5578

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