品川駅の高輪口にちょこちょこ用事がある。用事が済んで駅へと戻ることもあれば、
時折気が向いて、裏手の住宅地に忍び込んで、
御殿山方面へと足を向けることもある。
一方通行の裏道を抜けてソニー通りに出たところが、
ちょうど御殿山の交番のある交叉点。
交番の斜向かいにあるのが、
鶏飯店「MR.CHICKEN」だ。
扉を開けると、日本的「いらっしゃい!」ではなく、
愛想にはやや乏しい応対が待っている。
早速どこかアジアの屋台に紛れ込んだような、
そんな気になって、それが逆に愉しがらせたりします。
カウンターに腰掛けて見上げるメニューは、
紅いパネルに料理5品程、ドリンクは白いパネルに表示してある。
アジアンビールは、ご存知タイガービール等々であります。
紅い丸箸の向こうにみる厨房のスタッフも紅いユニフォーム。
もしかしたら東南アジア出身のひとたちのようにも見えるし、
純粋な日本人のようにも見える処がまた面白い(笑)。
まずはやっぱり、「シンガポールチキンライス」からいただかなければなりません。
「シンガポールチキンライス」には、ホワイトとブラウンとがあって、
前者は蒸し鶏で、後者は揚げ鶏となっている。
揚げ鶏も気にか掛かりつつ、基本形に思うホワイトをお願いしました。
チキンライスというと、遡れば恵比寿の「海南鶏飯食堂2」とか、
西新橋や西麻布の「夢飯」を思い出す。
移転前の「Singapore Seafood Emporium」や、
都立大の「Hibusuma」でもいただいたことがある。
お馴染みの蒸し鶏とジャスミンライスとのコンビも紅いお皿に盛られると、
またちょっと違う表情に映ったりもいたします。
柔らかに蒸し上げた鶏には、その身自身の香りと旨味が滲んでる。
少々苦手だったパクチーもいつの間にか好みの香菜となりました。
パラッパラの長粒米を鶏ガラスープで炊いた香りも悪くない。
これをお箸で食べようとするのは容易でなく、匙を出動させるのがスムーズですね。
卓上には、生姜ソース、チリソース、そしてダークソースの三つがスタンバイ。
お好み次第でソースを添えて食べ進みます。
生姜もいいけど、やっぱりダークソースが一番似合う気がします。
ダークソイソースは、ダイビングでバリ島を一周した時に買って帰ってきた想い出がある。
見た目ほど甘くなく粘度があって、でもさらっとコクを加えてくれる感じがよいのです。
ふたたび訪ねた夜には、カウンターの奥へ腰掛ける。
扉越しにひと気の少ない通りの灯りが覗きます。
今夜は、移転してしまった有楽町「あろいなたべた」や、
新川の「バンコック ポニー食堂」を思い出す「タイガパオ」。
それはつまりは、そぼろにした鶏肉とガパオの葉に玉葱の炒め物。
「あろいなたべた」のものに比べると、割りと辛味を控えた仕立てになっている。
スプーンで温泉玉子を崩し、
ジャスミンライスと一緒にがしがし喰らう感じがなんともよいのです。
「ベトナムフォー」もこれまた紅い器でやってくる。
スープはどこまでも澄んだ鶏スープ。
大盛りにしてもらったパクチーに揚げ葱に鶏団子。
蒸し鶏にプチトマトの赤が映えてみえます。
箸から滑る米粉麺の透明感を見定めながら、啜る優しさ。
澄んで素朴なスープには、こんな優しい麺がよく似合います。
「マレーシアイエローチキンカレー」は、
ココナツミルクの甘さとスパイスの辛味のバランスを愉しむカレー。
グリーンカレーでも活躍するココナツミルクだけど、
刺激一辺倒にならずにほんわりといただける感じがよいですね。
おそらく、「イエローチキンカレー」の延長線上にあると思うのが、
冬限定の「ラクサ」というメニュー。
シンガポールやマレーシアでは、
ポピュラーに食べられている麺料理、と黒板にある。
鶏に加えて海老の出汁をベースとしてココナツミルクと辛味とで織り成すスープにグッとくる。
薄めにスライスした厚揚げのトッピングが面白い。
そんなスープに合わせたのは、
ベトナム的米粉麺ではなくて、やや縮れの中華麺。
くにゅっとした歯触りがさらっとしたコク味のスープによく似合っています。
御殿山交番の斜向かいに鶏飯店「MR.CHICKEN」がある。
webサイトによると、こちらのシェフは、
シンガポールの「Zheng Swee Kee Chicken Rice」で修行を積んだらしい。
シンガポールをはじめ、マレーシアやインドネシア、
タイやベトナムの空気をしっかり取り込んで、再現しようと努めている様子。
この夏には、特に湿気の上がって蒸し暑い日に、
タイガービール片手にのんびりしたいなぁ。
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「MR.CHICKEN」
品川区北品川5-12-6 若林ビル103 03-6687-9367
http://mrchicken.jp/

