辿り着いたのは、お城を間近に見上げるなんとも素敵な知人のお宅。気鋭の大工が自ら手を入れた家屋の前に広がるのは、濃密な草木のお庭。 二年半前の年が切り替わるその夜に、 シャンパンや「モーツァルト・ドライ」のグラスを手に、 アイスバーを囲みながら新年を祝う花火を見上げた、 雪一面の庭の様子を懐かしく思い出します。
そこからメンヒスブルクの尾根辺りを巡るように散歩して、 ミュルナー・ハウプト通りへと降りてゆく。 今宵の目的地は、路面バスのケーブルも交差する大学病院近くの五叉路のところ。
左手にいつぞやの粋なレストラン「esszimmer.」。 そして、その奥手に伝統料理酒場「Krimpelstätter」がある。モーツァルトの背姿を描いたらしき不思議な球体の向こうには、 アウトドアに置かれたテーブルや椅子たちがビアガーデンを成す。 奥の小屋から麦酒をサーブするようです。
ご相伴は、「ザルツブログ」執筆のおふたり、seppさんとlaraさん。 店のスタッフにニコヤカに迎えられ、ビアガーデン側の入口からいざいざ。古の階段を上がった二階は喫煙可フロアらしく、 引き返して一階のテーブルに腰を下ろします。 幾つかのテーブルには予約を示す札が載っているね。
まずは、ザルツブルクのアウグスティーナーAugustiner Märzenbier のグラスから。程よいコクの奥行きがあって、ホップの香り華やかで。 想定以上に美味しくて、少々びっくりの麦酒であります。
スープをいただきたいと「Leberknödelsuppe」。それは、レバーLeber の団子Knödel のスープSuppe。 パンを繋ぎにころんとまぁるくしたレバーペーストに宿る滋味。 そんなお団子を浮かべたコンソメがまた旨い。 滋味なるレバーを崩し浸せば、嗚呼、美味しからずや。
メインのお皿は、 タウエルン地方産の鹿肉フィレのロースト 「Gebratene Maibock-Medaillons Aus Der Tauernregion mit Broccoli und Polentanocken」。断面が誘うミディアムレアの焼き加減。 そっとその身を噛めば、これまた想定外の柔らかさ。 鹿肉というより、 ホーエ・タウエルン山脈から届いたカモシカないしはノロジカのお肉というのが、 より詳細である模様。 当然臭みなんかまったくなく、身肉自身から心地いい旨味と甘い香りがする。 丁寧に仕立てたフォンを思うソースが焼肉チックに盛り立てる。 うんうん、美味しいぞ。
Polenta-Nocken はさしずめ、トウモロコシの粉の”そばがき”か。 むにっとした食感のあとから届く玉蜀黍の風味が愉しい付け合せだ。
laraさんは、定番という揚げた鶏をのせたサラダ「Backhendel Salat」。 seppさんのお皿はというと、やっぱり時季のシュパーゲル。それは、ウィーン東方のマルヒフェルドMarchfeld から届いたアスパラガス。 茹で加減もよろしいようで、seppさんも満足そうです(笑)。
ミュルナー・ハウプト通りに、 1548年創業の伝統料理酒場「Krimpelstätter クリンぺルシュテッター」。大満足の食事と時間をありがとう。 創業の1548年って、どうやら信長が登場する前あたりのことみたいだよ(笑)。
口 関連記事: 居酒屋「Resch & Lieblich」で 白ビールと掟破りの白ソーセージ(11年04月) Restaurant「esszimmer.」で 鮪大鮃に子牛鞍それぞれのグラス(11年04月) Mozart Distillerie「DIE DESTILLE」で カカオの香りに包まれて(11年06月)
「Krimpelstätter」 Müllner Hauptstrasse 31, Salzburg [Map] 0662 432274 http://www.krimpelstaetter.at/
column/03383