教会を離れて、早足で向かったのは、祝祭劇場の裏手辺り。 聳え見上げる岩盤の上に見える建物は、校舎の類らしい。祝祭劇場が刳り抜いているのと同じ、メンヒスべルクの丘を擁する岩盤の高い壁を刳り抜いた穴蔵居酒屋なのです。
満席なのだろうなぁと席の様子を窺うようにすると、ちょうど入れ替わりのお客さんがある。 幸運にも、数段の階段を降りたフロアの隅っこに席を得ることができました。 見上げる天井は、如何にも岩盤を刳り抜いたことを示す岩肌。それがカラフルな紙飾りに飾られています。 思いがけない方向にいるひとの話し声が反響して、妙にはっきり大きく聞こえ、そのざわざわが次第に増幅するようにも思えます。
やっぱり麦酒をいただかなくちゃと、早速。 グラスには、呑み過ぎて膨れたお腹を擦りながらジョッキ片手にするオジサマのエンブレム。 そのオジサンは、フランシスコ派の修道士、とのこと。Franziskaner Weissbier(フランツィスカナー)のヴァイス・ビアだ。 どこか、バナナに似た甘い香りを想いつつ、くくーっとグラスを傾けます。 ぷはー(笑)。
もうすっかり夜だから白ソーセージはないのだよね、と洒落のつもりで訊いたらば、 なんとあるらしい。 そ、それって掟破りなことなんじゃないのん?とか思いながらやっぱり注文んでしまいます。 耐熱カップにちょっと窮屈そうに泳ぐ二本の白ソーセージ。 ずるつると皮を剥がしてから、たっぷり添えてくれている甘いマスタードをちょこんと載せて。 んん、いつぞやミュンヘンでいただいたヴァイスヴルストとは、明らかに何かが違う気がする。 やっぱり、正午以降、それも暗くなってから鮮度命の白ソーセージをいただくというのはイケナイことなのかもね(笑)。
それじゃぁってことで今度は、グーラッシュで煮込んだヴルストを所望します。ああ、パプリカの風味にトマトの酸味、そしてグリーンペパーのピリ辛。 ちょっとまったりし過ぎちゃった気がしないでもないけど、ソーセージとの相性ばっちり。 パンをもらって、ソースをこそげなくっちゃ(笑)。
ほら穴居酒屋とひとは呼ぶ、 刳り抜いた岩盤にあるausschank「Resch & Lieblich(レッシュ)」。今宵もきっと、ざわめきの響く穴蔵で愉しい語らいの宴が開かれているのでしょう。
「Resch & Lieblich」 Toscaninihof 1a Salzburg [Map] 0043662 843675
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