餃子の有名店良店が競うように点在する蒲田界隈。
その一方で、とんかつの佳店も負けてない。
JRの東側には、「丸一」を筆頭に、新進の「檍」に「マルエ」など。
そして西側の代表格といえば、とんかつ「鈴文」。
「カキフライ」への期待も綯い交ぜにしつつ、足を運びます。
処は、ちょっと周囲を隔絶するような東京工科大学の建物の向かい側。
再開発の此方と彼方を同時に眺めるような気分になりながら、
新しい方に背を向けて白く潔い暖簾に対峙します。人気のカウンターには空席が数席。 お母さんが促すままに、角に近い辺りの一席に腰掛けます。
そっと厚切りの肉塊を取り出して軽く塩胡椒。 カウンターの内側に配置してる竹串で引っ掛けるようにして溶き卵に潜らせ、 パン粉を着せる。 そして油の中へとするっと滑り込ませる。
何かを達観したかのように、泰然とゆっくりした表情で油殿の湖面を見詰めるご主人。 何気に一句、呟きそうな表情がなんともチャーミングだ。
おかあさんが赤出汁とご飯を運んでくれたら、出来上がりのサイン。
届いたお皿のカツは芳ばしい揚げ色。檸檬をちゃっと搾り掛けて、そにままどれどれと口に運びます。
帰り際に、牡蠣フライはまだですか?と訊いてみました。 すると、ご主人が柔和な表情を申し訳なさそうにちょっと歪ませて、 値段が合わないし今年は難しいかもしれないです、と仰る。 それだけで、例年、三陸の牡蠣を使っていたこと、 牡蠣フライにするなら三陸の牡蠣じゃなければという拘りが容易に想像できる。 そうですね、来シーズンにはいままで以上の、 フライにも合う牡蠣が三陸から届くに違いないですものね。
別の夜の蒲田西口。 牡蠣の代わりに、奮発して「海老フライ定食」をいただいちゃおうと勇んでやってきました。 注文を告げると、あ、海老フライ、もう仕舞いなんです、と切ない知らせ。 ならばと、「特ロースかつ定食」に挑みます。
蒲田を、いや城南を、いや東京を代表するとんかつ店のひとつ、 とんかつ「鈴文(すずぶん)」。
「鈴文」 大田区西蒲田5-19-11 [Map] 03-5703-3501
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