一日店長「無銘食堂」で 一夜限りのチャリティ・オイスターバー

mumeishokudo.jpg週末土曜日の宵の口、渋谷駅前交差点。 いつもなら、スピーカーがけたたましく客を誘う声を張り上げ、大型ビジョンが競うように映像を流してる。 いつもなら、待ち合わせるひと、信号が替わるのを待つひとたちで溢れてたハチ公前。 好き勝手に交錯する交差点の人混みは、駅前のスクランブルを世界一渡り難い横断歩道にしていた。 Q-FRONTのTSUTAYAへ行くのに、わざわざ地下へ廻ったことも幾度かあるくらいだもの。

そんな渋谷駅前の節電対応の夜。mumeishokudo01.jpgいつもと違うその暗さと交差点を渡るひとの少なさが少し心細い。 宇田川町交番を左手に進み、その奥の暗がりへ。 ちょうど焼き肉「清香苑」の向かいに目指す名前が見つかりました。 外階段から雑居ビルの二階に上がって覗いたのは店には、 小さく「無銘食堂」と標されています。 「無銘食堂」は、毎日替わる一日店長によって営まれるという、ちょっと不思議なお店。 なるほど、ひと晩だけだったら自慢の料理を供するお店を開いてみたいとか、実はカクテルマニアなところを披露しちゃいたいとかとか、色々なニーズを満たしてくれそうで面白いね。 そして今夜の「無銘食堂」は、題して”一夜限り開設のチャリティオイスターバー”。 被災地仙台が本拠地の「旨い牡蠣屋」から全国の牡蠣を取り寄せて被災地支援者と楽しみ、義援金(募金)を集める。牡蠣を消費することで産地、牡蠣猟師、販売者の支援を行う、ことを趣旨に催されたものだ。

ほぼL字カウンターだけの小さなフロア。 そのカウンターを様々な想いで趣旨に共鳴したひとたちが埋めています。mumeishokudo02.jpgその中心にあるのが、三つの発泡ケース。 営業再開を準備中の「旨い牡蠣屋」が送ってくれた生牡蠣三種が出番を待っています。

まずいただいたのが、能登かき。mumeishokudo03.jpg日本海側の牡蠣といえば、築地「地下の粋」でいただいたことのある京都・舞鶴か、 「グランド・オイスター・バー丸の内」でいただいた九十九島か。 はたまた、四谷「酒徒庵」でいただいた、長崎・小長井か福岡・門司港か。 そうか、能登の牡蠣もあるのだね。 能登かきは、能登島の浮かぶ七尾西湾に産する真牡蠣だ。 仄かな甘さに心地よい磯の風味すっと抜けてゆきます。 ワインのグラスを一旦置いて、受け取った牡蠣は白石湖産。mumeishokudo04.jpg白石湖ってどこだろうと訊けば、三重県南の尾鷲湾に接する汽水湖のこと。 的矢でも鳥羽でもない白石湖の牡蠣。 どうやら生産者が少なくて、その分市場にはあまり出回らない、ということらしい。 三つめの牡蠣が、ご存知、兵庫・赤穂モノ。mumeishokudo05.jpgただ、赤穂でも坂越(さこし)浦という漁場で育んだものだという。 みっつの中ではややコクがあって、海域の表情を窺わせるように磯の風味が微妙に違うのが面白いね。

樽香のワインをお代わりして、 三陸の牡蠣養殖家、畠山さんのご無事について言葉を交わす。 畠山重篤さんは、当代の牡蠣養殖の父ともいうべき方なのだ。 mumeishokudo06.jpg壊滅状態だときく三陸の養殖場の惨状に心を痛めていることは想像するまでもない。 そんなことを考えながら、「カキ産地に光を!募金」箱にささやかな募金を。 提案・実施者のgenyui さん、代表女史、お疲れさまでした。 日本オイスター協会では、「牡蠣復興および被災地救援対策会議」という取り組みをはじめています。

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「無銘食堂」 渋谷区宇田川町41-26 パピエビル2F[Map] http://mumei.co.jp/
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