都内で沖縄そばを出す店は、
沖縄料理店の数だけあると考えてしまうのが単純だけど、きっとおよそ間違いじゃない。
そうすると、かなりの数の店で沖縄そばを啜れるということになるね。
でも、八重山そばや宮古そばを出す店となると途端に稀になる。
そんな、珍しくも宮古そばを出すお店が学芸大学にあると知ったのは、まだ残暑がしつこく居座る頃でした。
西口から商店街を真っ直ぐ進んで、
「餃子の王将」の行列を横目に過ぎたところにあるのが宮古そば「くち福」だ。
狭い間口の引き戸の硝子越しに、5脚ほどの丸椅子が窺えます。
こんばんはと鼻先を店内に入れると、
豚出汁と鰹の合わさったどこか懐かしい匂いが擽る。
真ん中の丸椅子に座り込んで眺めるメニューは、シンプルに3種類。
「ソーキそば」に「宮古そば」、そして「野菜のせそば」。
まずは「宮古そば」をいただこうかな。
角煮二枚にかまぼこもふた切れ、そして紅生姜と刻み葱が彩り。
澄んだスープは、素朴にすっきりとした旨みとコクを湛えていて、いい。
なるほど、ややつるんとした表情のちょい平打ちの麺は、
沖縄すばのそれでも八重山そばのそれとも違う。
訊けば、その麺を始め、ほとんどの材料を宮古島から空輸しているのだという。
かまぼこなんかは足が早いので、島のものとは少し違う仕立てにしているそうだけど、なんちゃってではない島のそば風情がちゃんとある。
当地のそばは、老舗の「大和食堂」と池間島方面のお食事処「すむばり」の二軒しか知らないけど、ね(笑)。
日を変えて今度は、「野菜のせそば」をいただきました。
キャベツ、人参、玉葱にソーキやソーセージの端っこをフライパンで炒めてのせた、これまたシンプルなどんぶり。
あくまであっさりしながら、ちゃっかりと深みのあるスープは、
そんな野菜炒めにもすんなり馴染みます。
卓上の「ヒバーチ」に竹富島の「竹乃子」を思い出しつつ、
少し振れば、またちょっと違う風味が愉しめます。
敢然と宮古そばを供してくれる稀な店、学芸大学「くち福」。
もう最近は潜ってないと仰る大将だけど、カウンターには宮古島のダイビングスポットを紹介する冊子が置いてある。
ああ、そう云えば、宮古島では有名ポイント「通り池」にも潜れていない。
あの島にもまた行かなくちゃ、だ。
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「くち福」
目黒区鷹番3-18-21
[Map] TEL非公開
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