実家からの帰り掛け。
四面道から青梅街道を斜めに離れて、
中杉通りへ。
そのまま早稲田通りを越えたあたりは、
ひっそりとした住宅地だ。
灯りの少ない通りに、
路上の黄色い看板が目に留まる。
台風の余波を思わせる雨と風が止んできた中向かったのは、中国料理「皇蘭」です。
どんな雰囲気なのかなぁとドアを押し開けるすぐ目に飛び込んできたのは、
フロア中央で賑わう様子。
あれ?貸切の宴会かなにか?と窺うような構えになると、
どうぞどうぞと招き入れてくれる。
訊けば、最近、日テレ「ぶらり途中下車の旅」で紹介されたという「富貴鶏」という料理をちょうど”開腹”しているところだったみたい。
「わー!」という歓声はそのためだったのですね。
思わずどれどれと覗き込むと、外側の土状の覆いを除けて、包丁を入れつつ大きな葉っぱを剥がすようにしている。
そしてその中から、なるほど、鶏の身が顔を出した。
そこでまた、「わー!」と歓声を上げるオジサマオバサマ方(笑)。
おー、なるほど、手間の掛かった、そうそうお目にかかれそうもない料理だね。
ここ「皇蘭」の名物という「富貴鶏」は、鳥の内臓部分に雪菜や香草なんかを詰めて、土を捏ねて粘土状にし、塩や小麦粉を混ぜたものと一緒に蓮の葉で覆って、オーブンで5時間程かけて蒸し焼きにした料理だそう。
包んでからじっくり寝かせるために、4日前からの予約が要るらしい。
メニューには、”幻の乞食鶏”という解説ページがあって、「教化全鶏」の物語が綴られています。
35,000円だって(笑)。
お目当ての「かきつゆそば」はお願いするとして、あとなにを注文もうかなぁとメニューを睨んでいると、「どうぞ、お裾分けです」と、お皿がテーブルに。
「富貴鶏」のご相伴に与る幸運に恵まれたのです。
柔くなった朴葉のような蓮の葉に載せられた鶏の身の薫りを、
くんくんしながらいただきます。
蓮の葉の香りが生薬というか薬膳ちっくなハーブとして利いていて、
ああ、それが心地いい。
鶏自身の旨みがぎゅっと閉じ込め凝縮しているような印象で、
なんだかありがたい(笑)。
ご馳走さまです。
蓮華からはふはふしたのは、
滴るスープともちっとした皮が美味な「ショウロンパウ」。
そして、お待ちかねの「皇蘭」特製湯麺のひとつ「かきつゆそば」がやってきた。
軽く片栗を叩いてさっと揚げた風情の牡蠣の身もひと際ミネラルな旨みが凝縮して、むほほ。
何気なくもひたひたと迫るスープの出来もなかなかであります。
うん、いいね。
こうなると、13,000円の「特選皇蘭ラーメン」も気掛かりだ(笑)。
中杉通り沿いの住宅地にそっとある中国料理「皇蘭(おうらん)」。
壁には、自らを”超わがままな店主”として、
「当店は調理に時間をかけますので、お急ぎのお客様わがままなお客様、御容赦ください」と貼紙がある。
時間と気持ちに余裕があるときにお邪魔するのが、
美味しくいただくコツのようです。
「皇蘭」
杉並区下井草1-13-14
[Map] 03-3330-2300
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