ひるどきのロメスパ「かんかん」とか、
がっつりカレー「かんかん」のことは、
ちょっとは知っている。
でも夜の「かんかん」のことはまったく知らない。
いつぞやランチの清算時に「かんかん」のその名の由来を訊ねた時には、暗に「夜にいらっしゃい」とでもいうようなオヤジさんの口調が印象に残る。
やはり、「かんかん」が何故に「かんかん」なのかが気に掛かる。
その答えを得るには、「夜かんかん」へ冒険が必要なのです。
夜の新川停留所前。
いよいよ「夜かんかん」の扉を開くときがきました。
ご一緒をお願いしたのは、
帝王ナポちんとその兄にして父の
Gingerちん、そしてカントクこと
グヤさんという強力布陣。
こんな後ろ盾があれば、「かんかん」と「夜かんかん」の謎になんとか挑めるかもしれません。
勢いよく扉を引いて、店内に足を踏み入れると、意外なことにほぼ満席状態。
念のために席だけでもと予約を入れといてよかったーと安堵と驚きの一瞬です。
ナポちんの流儀に倣って、ここはやっぱしウーロンハイで乾杯だ。
如何にもちょっとしたお通しな感じの板わさをぺろんと平らげて、忘れないうちにと早速「カキフライ!」と声を掛けると、いやあのだから~という戸惑うような遣る瀬ないような不思議な表情で黙殺するオヤジさん。
むむむ、夜になってもオヤジさんのハードルは高いのか。
向かいのテーブルに届いたデカいメンチみたいなヤツはなんだろねと品書きを見上げていたら、同じものがこちらのテーブルにもやってきた。
おおお。
ケチャップをたっぷし添えてくれたポテコロがどーんと。
え?これもお通しというかセットみたいなもの?
結構食べであるけどなぁー、でも案外イケるかもなぁーと喋繰りながら、ウーロンハイ(笑)。
そろそろいいだろうと改めて「カキフライ!」と叫ぶと、いやいやそうでなくてとぷち苦笑いの表情で厨房の方へ引っ込んでしまうオヤジさん。
むむむ、「夜かんかん」は注文の通らない居酒屋か。
すると今度は、回りのテーブルにひとり用土鍋が並び出す。
もしかしてあれも来るの?と顔を見合わせていると、案の定それは湯気を燻らせてやってきた。
おおお。
溢れんばかりにバラ肉が踊り、大きめ豆腐もゴロゴロとして、
これもある意味「かんかん」らしい量感で訴える。
ね?なんかこれ食べたら一丁あがりな感じになったりしなくない?
そう云いつつ蓮華を動かすと、大鍋でごった煮した訳ではなく、土鍋ひとつづつを丁寧に炊いた風で、これがなかなかイケる口。
ハフハフしながら一気呵成に平らげると、なんだか不思議な温もりに包まれた心持ち。
ここで御馳走さましちゃっても全然いいのだけれど……。
もうほんとにそろそろいいよね、と「注文いいですか?」と恐る恐る訊ねると、
はい、いいですよ。
あー、よかったー(笑)。
ランチのロメスパと格闘している時でもちらちら見上げてずっと気になっていたのが、壁に貼られて黄ばんだ「かんかん特選お酒のメニュー」。
その中に「カキフライ」もあるのです。
ややあって到着、「かんかん」の「カキフライ」。
ちょい揚げ色の濃いのは、油の温度というよりは油の鮮度に由来していそうだけれど、そんなことは噯にも出さずに齧りつく。
タルタルでなくて、直球マヨネーズというあたりも、つまりは「かんかん」らしい。
もしかしたら冷凍牡蠣かもねと思いつつ、齧った断面をじっとみる。
もうひとつ齧ってはふむふむ、もうひとつ齧ってはふむふむ。
そして、いい加減満腹なのだけど、それを注文まない訳にはいかないぞと「ナポリタン」。
するとどうゆうことかオヤジさん、「大盛りで?」と訊くではないか!
思わず、「じゃーそれで」と応じるナポ帝王。
満腹のところへ大盛りがやってきちゃいました(笑)。
小食を自負するGingerちんは、ちょと口にして後はよろしくの体。
残り3名がナポ帝王を筆頭に敢然と大盛りクリアに挑みます。
お昼どきの印象と比べて少々、炒めが足りないような気がするけど、間違うことなき「かんかん」の「ナポリタン」。
帝王も認める、シャツに飛ばない系のナポが密度と重量感で迫ります。
うー、満腹ーっ。
さてここで、満を持してのオヤジさんヒアリングタイム。
お会計は、妙にキリのいい12,000円也。
ざっくりひとり3千円だよと暗に告げているような。
そこでGingerちんが口を開く、「最初の三品のところはおいくらですか?」。
するとオヤジさん、こう応えてくれた「千円くらいかなぁ~」。
くらいかなぁ~、って~(笑)。
あ、領収書には「SNACKかんかん」となってるね。
そして、肝心の店名の由来を訊いてみる。
するとオヤジさん、遠くを見るような目になって語ってくれる。
かんかんのマスターは当時、二軒の雀荘を営んでいたそう。
さらに現「かんかん」を設けるにあたってどんな店名にするか辞書引き引き考えた。
まず思ったのは、最後に「ん」のつく名前がいい、ということ。
そして、その頃日本にやってきて大人気のパンダの「カンカン」は、漢字で書くと「康康」であり、それはマスターの名前「康三」に繋がる。
麻雀の「かん(桿)」と同じ音でもあるしね、と。
「カレースパ」啜りながら、やっぱりパンダかなぁでもちょっと可愛らしいよなぁと考えたのは、素直な発想だったのですね。
夜なお隠れた人気の新川のシンボル、居酒屋「かんかん」。
中国からパンダの「カンカン(康康)」と「ランラン(蘭蘭)」がやってきたのは、1972年のこと。
つまりはそれからもう、40年。
そうすると居酒屋「かんかん」ももうすぐ40周年を迎えようとしているところなのかも。
“雀荘のマスター”な感じ、のオヤジさん。
今度は、しょうが焼きもお願いします。
口関連記事:
洋風居酒屋「かんかん」で 太目の麺とほどよい辛さカレースパ(03年05月)
居酒屋「かんかん」で ナポリタン誘う膨満感とピーマンほの苦味(08年08月)
居酒屋「かんかん」で ドライカレーにカレーライスにカレースパ(10年05月)
「かんかん」
中央区新川2-7-11 仮谷ビル
[Map] 03-1234-4567
column/03052