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山形イタリアン「YAMAGATA San-Dan-Delo」で 山形食材じっくり
銀座・有楽町界隈は、気がつけば10数店が競い合うように出店している、謂わばアンテナショップ銀座。
その一角に、山形のアンテナショップ「おいしい山形プラザ」が追随オープンしたのはこの4月のことでした。
1階は、お約束の特産品の展示販売フロアになっていて、2階の一部は当地山形への観光情報を発信するエリアになっている。
そして、その2階フロアに山形の地域活性化を一身に担うかのような存在となっているのが、
山形イタリアン「ヤマガタ サンダンデロ」。
ヒロキエさんがオープンの頃早速訪れて、様子を伝えてくれていたっけね。
日時は9月某日の夜。
なぜにその日かというと、今夜は奥田シェフが当地レストラン「アルケッチャーノ」を飛び出して銀座で腕を揮う、月のうちの数日に当たるから。
事前に記名して予約する「LA BETTOLA」スタイルのランチも人気らしいよ、なんて話をしながらテーブルに着く。目の前に置かれた、それぞれに別々の野菜が描かれた木のプレートをひっくり返して、ボクのは宝谷かぶ、のむのむさんのは友江フキなんて、早くも山形食材のプレゼンが始まっている(笑)。
お願いしてあるのは、シェフおまかせのコースだ。
鶴岡のシルク「きびそ」を使っているというカバーで飾ったドリンクメニューで「Lista dei Vini Yamagata」と括られた章を発見、今夜はやっぱり山形ワインでいきましょー(笑)。
まずは乾杯に似合いそうな一本をということで選んだのが、
高畠ワイナリーのスパークリング「嘉yoshi」。シャルドネにして酸味柔らかな辛口で、呑み口のいい。
最初にやってきたお皿には意外や、ひと切れのお刺身。
庄内浜のワラサの切り身の廻りに塩が振ってあり、その塩が「満月の塩」。まずはミネラルな塩だけで素材そのものを味わってみて、というアプローチだ。
情緒的違いなのではないかなとは思うものの、満月の際と新月の際に採取するのとではミネラル分が違って、満月の塩の方がミネラル豊かだという。
続くお皿も刺身風で、ん?と思うも、これが意外や、川魚の岩魚と底魚の平目が出逢ったテリーヌ。一見しては判らないけれど、ふた種類の刺身を並べるように重ねるようにしてひとつにしているんだ。
口にしてはじめて、なるほど、ひとつになりながらも食感と風味が違うあたりが面白い。
トッピングにマスカット、廻りに配したフレークは塩の代わりの岩魚の燻製だそう。
三皿めで前菜的パスタがやってきた。トマトの冷製カッペリーニは今や定番になりつつあるけれど、
これは意外やマグロをも使っているという。
フルーツトマトとマグロの赤身の取り合わせに違和感はないものの、ならばもうひと塩ある方が好みではあるかも。
二本目のワインにと月山ワイン「ソレイユ ルバンsoleil levant」。
ラベルには、製造者名に月山ワイン山研究所と記してあって、北限としていわれる山形県鶴岡市で収穫した甲州ぶどう単一種で作った辛口。
硬いと思う寸前のキリリとした酸味にフルーティーな風味が重なります。
仲良く並んだ二匹のエビは、庄内湾産の赤海老。その赤海老が抱いているのが、炙った焦げ目をつけた「つゆ姫」というお米のリゾット。
この秋から発売される新種のお米らしい。
海老の甘さ香ばしさとお米の甘さ香ばしさが互いに呼応するような食べ口で、いい。
彩り鮮やかな翠は、庄内の在来作物、だだちゃ豆。
ん?なんだろ?あ、そっか!と思わせた(笑)のが、あまだいの松笠焼き。鱗を逆立てるようにして揚げ焼きしたような仕立てで、その皮目のクリスピーな食感も愉しからずや。
トップには水菜のあしらい。
そして再び、なんだろ?と思わすのが、周囲に配置した「みずの実」。
山形の、水の綺麗な沢周辺に自生するという山菜の実で、むかごの一種ということらしい。
独特なぬめりがあって、噛めばコキュッとした不思議に瑞々しい歯応えが面白いのだ。
魚介シリーズはまだまだ続いて、次なるお皿は郷土の仕立て、ハタハタの湯上げ。
湯引きするかのようにさっとそして柔らかく茹でたハタハタの身は繊細なる甘さ。
そこへ、軟白ねぎのビネガー和えが味わいにいい色を添えています。
柳鰈のグリルには、釜石のキャビアのソースを添えている。
国産のキャビアを口にするのは、初めてのことかもしれません。
海のモノと山のモノの組み合わせの妙が、続いているね。
ここで奥田シェフが食材の載ったお皿を手にテーブルにやってきた。
その日の昼間、千葉で行った勉強会からいただいて帰ったものだという、栄螺。これらサザエの活きよろしく、覗き込んだくにちゃんに向けてピューっと沢山の水を吐く勢い。
キッチンに戻ったシェフが繰り出してくれたお皿は意外や、スープ皿。
サザエと小松菜のみどりのスープは、新鮮なサザエが手に入った時にしか作らないという、
山形・庄内のシェフの店「アルケッチャーノ」のスペシャリテ。小松菜の清々しい風味の向こうに、サザエの身と肝の臭みとは無縁の滋味が滲み入るように伝わって、しみじみ。
シェフが千葉での勉強会に行っていなければきっと、味わえなかったお皿なのですね。
そしてこのお皿には、あとになって繋がりに驚く、ぷちサプライズを含んでいました。
シェフが昼間行った勉強会というのが、後日お邪魔する南房総市のプロジェクトが招聘したものだったという、その奇遇(笑)。
さすがにそろそろお肉系か(笑)と、鼻を利かせて今度は、赤ワイン。
東北最古のワイナリーといわれる、酒井ワイナリーの「鳥上坂(とりあげざか)」。
ビンテージもぶどう品種もあれこれブレンドしてノンフィルターで仕上げるという、その都度味わいが違うという変り種だ。
その赤をへーと云いながら口に含んでいるところへ届いたお皿が、鯨のカツレツ。トッピングの重なりが不思議な美しさ。
シェフが解説してくれた通り、鯨(つちくじら)の身がブータン・ノワールのような凝縮感と独特な風味がする。
ふたたびのパスタは、マッシュルームのニョッキ。スプーマを添えたお皿には、ふっくらしたニョッキを包むソースにペーストにしたマッシュルームを使い、さらに千切りしたフレッシュマッシュルーム。
マッシュルームの風味に一瞬全身が包まれたかのような心象になるのです。
さてさてお次は、フォアグラ。生の無花果の上にフォアグラを載せ、そこに寄り添う無花果のジェラート。
そして無花果のソースをあしらうという、フォアグラとイチジクのマリアージュ。
とろんとしたイチジクの実のあっさりした甘さが意外や、
フォアグラの重さを按配よくしてくれるのだね。
そして、深いピンク色でやってきたのが、丸山羊。だだちゃ豆を飼料に育てたという丸山さんの羊のローストに、山形ソウルフード「だし」に沿った仕立ての野菜たちが添えてある。
これじゃぁ羊嫌いのヒトがいなくなるンじゃないかと思うほどにクセのなく、柔らかな身質の羊。
郷土のピクルス「だし」の酸味を軽いアクセントにしながら、不思議なほどすっとお腹に収まっていくのであります。
羊を平らげて、さすがにお腹を叩きたくなるよな(笑)、満足、満腹モード。シメのデザートはやっぱり、だだちゃ豆を使ったジェラートと和風なパンナコッタ。
だだちゃ豆の風味がまっすぐ味わえるなぁと思っていると、パンナコッタに小さな器に用意した液体を振り掛けてみてと奥田シェフ。
液体の正体は味醂なのだけど、あれ、ビックリ。
仰る通りに、モンブランを食べた後口のような栗の風味がしてくる。
シェフの、食材に対する向き合い方と美味しく愉しい食べ方への工夫を垣間見るような瞬間だね。
どうやら、冒頭の塩のみでいただくワラサに奥田シェフの考え方が端的に現れている。
シェフ自ら解説してくれたのは、あとは変化をつけながら、グラデーションを描くように味のアクセントを強めていくのだと。
味を強くしていくにしても、それはあくまでも、素材の味わいを活かすための手段としてなんだね。
シェフおまかせコースをいただこうという方は是非、店頭のパネルをひと通り眺めてからテーブルに着かれたい。
山形の食材をメインとした、山形イタリアン「YAMAGATA San-Dan-Delo」。Webサイトにもある通り、店の名「ヤマガタ サンダンデロ」は、「山形産なんでしょう(山形産だんでろ)」という酒田弁をイタリア語風にした造語であるのは、周知なところ。
出来得る限り山形の食材を使用したい!という想い、山形の食材一つひとつに拘りたいという想いが込めている。
「山形産なんでしょう」じゃなくて、「山形産なんです!」じゃないかとも思うけど(笑)、それだと酒田弁×イタリア語チックにならないのかな。
予約してくれた、しずりんさん始め、ご一緒の皆さん、ありがとー。
「YAMAGATA San-Dan-Delo」
中央区銀座1-5-10 ギンザファーストファイブビル2F [Map] 03-5250-1755
http://www.alchecciano.com/san-dandelo