やや遠くに聳える虎ノ門ヒルズ。 六本木ヒルズの飲食店にはちょこちょこ赴いたけれど、 東京ミッドタウンのように一度も訪れないままになるかもなぁなんて、予感が過ぎる。 あ、「鮎正」はこんなところに移っていたのだなぁと思ったり、 中華そば「月と鼈」を訪ねた、工事中の道路の様子を思い出したり。
それから季節が巡って、秋の或る夜。 伊勢うどんの「つたや」さんで「伊勢玉子うどん」を啜る前に神宮で授かった、 お守りを手に向かったのは、新橋の路地裏。今はなき餃子食堂「ネヂ」並びの角地が目的地。 「ZAKO」と示した提灯が暗がりに浮かんでいます。
お久し振りでーすとご挨拶して、テーブルに着く。 いつぞやご一緒したご同輩とどうもどうも同席して、 呑んだくれ仲間の晴れ女姐さんの到着を待つ間にまず一杯です。
物色してたお品書きからまず、「ポテトサラダ」。じゃが芋のホクホク旨味が直截に伝わって、黒胡椒の利かせがニクらしい。
「今日のさしみ」と題したお品書きがいい感じで、迷わす並びの中から例えば、「〆サバのガリあえ」。 しめ鯖×ガリ!なんてどうして今まで思いつかなかったのでしょう(笑)。 刻んだ長葱や菊花、紫芽(むらめ)をあしらった感じも、いいなぁ。
同じお品書きの「白菜の煮物」が、地味なフリして何気に美味い。白菜の柔らかいところの甘さが素直に愉しめるのであります。
ここいらで、”仙人”の笑顔がふと過ぎって、「ホッピー」を貰う。 一緒に届いたは、北海道産「目ひかりの唐揚げ」。深海の珍味、目光の眼が、唐揚げされて白く光ってる。 柔らかな白身に脂が滲んで、揚げたての旨さといったらもう。
同じ揚げたんでも、こちとら「長芋のもっちり揚げ」。長芋の、シャックリ食感を活かしつつ、 衣の香ばしさと添えたぷち辛味でどんどこ喰わせる。 やめられな~い(笑)。
「野菜」「おすすめ」「焼き魚」「酒肴」と見出しが配された別シートのお品書き。 そこからから選んだ「春菊のサラダ」は、糸削りをこんもり載せ。春菊を鍋なぞでなく、サラダでいただいたのは初めてのことじゃないかしらん。 オトナな青苦味がオツなんだよね。
ひぇ~やめて~、一度ならずも二度までも! てな訳で、「鰯の二度殺し」。大振りな鰯がきりっとした甘露の照りに包まれて、じっとこちらを睨んでる。 物凄く柔らかにして、繊細な味わい。 まずは煮られ、そして焼かられ。 嗚呼哀れ、”サーディーンは二度死ぬ”(笑)。
時季ですもの、岩手の牡蠣をいただきましょう。 「かき酢」もいいねと思いつつ、「かきと木の子の酒蒸し」を。アルミホイルをそっと開けば、立ち昇る湯気。 うーむ、煮付けてしまうのとは違うフルフルが閉じ込めた滋味を伝えてくる。 ホッピー、中、くださーい。
お野菜コーナーからもう一品と、「ゴーヤフリッター」。熱々の苦瓜の仄苦味に石垣「森の賢者」の「島野菜のてんぷら」を思い出す。 油の後始末が苦にならなけりゃ、おウチでもやりたいよね、これは。
「雑魚」の定番メニューにも気になるところが目白押し。 ちょっと〆る感じでと、なんと「かつお酒盗PIZZA」。これがね、ちょっとそこのおとーさん、めっちゃ旨いんですよ。 あ、お子さんにはちょっと向かないですけどね(笑)。
新橋の路地裏に、ツボを得たオリジナルな酒肴のいただける集い場所、 PUBLIC BAR「雑魚」がある。隅切り上部に掲げるカッコイイ看板は、 板金屋さんに注文して作ってもらったものだそう。 「ネヂ」同様、「ザコ!」と音ふたつの店名って、 親しみを籠めて呼び易くていいよね。
どこか雑然としたこの路地の先を右にちょっと曲がれば、 そこがもう忽然と幅員40mの大通り。 通称、環二通りにして、愛称、新虎通り。 焼き鳥屋、居酒屋なぞ小さなお店が犇いていた一角を巻き込んで、 それらを薙ぎ倒すように縦走した計画道路のありように、 小さな畏怖の念を覚えます。
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「雑魚」 港区新橋4-19-6 第二粕谷ビル1F [Map] 03-5401-0141
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