ところが、どうやらマッカーサーがそんな要求をした的な理解は間違いのようで、 敗戦国にそんな道路は必要ないとGHQはむしろ反対の立場だったらしい。 幻は幻のまま、きっと実現しないのだろうなとも思い込んでいた道路計画が、 都市計画道路環状二号線の主要区間として事業化され、 一部開通が予定されるまでになった。 道路上に建物を建てられるように法律まで改め、こんな都心の真ん中で用地買収を果たし、 事業を具体化した強引な手腕には敬服するばかり。
新橋を縦断するように占める工事現場を金網越しに。建設機械の向こうに見える高層ビルは、 環状二号線の上に建つというビルでしょか。
工事の進む環二の帯を跨ぐようにして、その向こう側へ。 思えば、旧き「鮎正」へは足を運べず仕舞いだったなぁなどと考えながら向かうは、 恐らく、環二が事業化して開発エリアを区切った後からオープンしたであろうお店。 煮干し出汁の中華そばも人気と聞く「月と鼈」がずっと気になっていたのです。
中央に亀甲を据えた金文字の看板。何処かで見憶えのあるその意匠に、あれっ?と思う。 嘗て西新宿にあった「凪」の一軒が煮干し中華の店にして同じ味わいの看板を掲げていた。 「凪」の新店ということではないようですが、 何かの関係はあるのでしょうか。
そんなことをぼんやりと考えながらポチッとしたのは、 「煮干し中華そば 一段搾り」の黄色いボタンです。 玉ねぎ増しでお願いしましょう。
素朴な景色が麗しきどんぶり。いい感じだなぁという想いは、 そのスープを啜って、おおおーと確かなものになる。 ううむ、これは旨いぞと。
澄んだ煮干しスープの青森「まるかい」や浅草「つし馬」とも違うし、 粒子系ニボニボの大泉学園「伊吹」とも明らかに違う。 別の動物系スープをほんの少々加えているのかのようなバランスのとれた旨味のコク。 それがすかっと濁りなく素直に届くのがいい。
別の夜、ふたたび環状二号線の工事現場の向こう側。 今度は、「肉中華そば」を「煮干し増し」で挑みます。
なははは、こりゃいいや。 なるほど、煮干しの旨味がじわじわぐぐっとくる。 そしてそれが淀みなく明瞭に広がる。新馬場「いまむら」で想った、 煮干し使いの巧みさとバランスの良さが、ここにもある。
麺は、モチっとしながら歯切れのいい仕立て。無かん水の細ストレート麺よりも、 なるほどこんな作りの麺の方がより似合うかもしれません。 調子に乗って、今度は「濃厚煮干し中華そば」。大概「煮干し中華」に”濃厚”の冠がつく時は、 動物系のスープとの合わせ技。 動物系の脂を丁寧に乳化させたスープに魚介の風味が薫る。 妙にベッタリさせない手筈に感心するところ。 でも、「煮干し増し」の「中華そば 一段搾り」には敵いません。
巧みなる煮干し使いのつけ麺中華そば「月と鼈(つきとすっぽん)」。今はなき西新宿「凪」は嘗て、 なかなかの完成度を魅せる特級煮干し中華そばの店でした。 その西新宿「凪」の看板と酷似した意匠の看板を掲げているのはなるほど、 同じ看板店に製作を依頼したからで、「凪」とは関係ないということのようだけれど、 煮干し中華の完成度とを併せみるに、 実は西新宿「凪」のスタッフがなんらかのカタチで関わっているのではないかと、 勝手に臆測しています。
口 関連記事:
ラーメン「まるかい」で 煮干し醤油ラーメン澄んだ中の旨み風味(10年01月)
中華そば「つし馬」で 青森煮干の中華そばと特濃バリ煮干し旨し(09年11月)
中華ソバ「伊吹」で むほほほ煮干し中華ソバと限定煮干しソバ(11年11月)
らー麺「東京いまむら」で 煮干しソバ独創的で端正なドンブリたち(12年12月)
「月と鼈」
港区新橋4-27-7 [Map] 03-6450-1059
column/03356