古びたビルの地階への階段。 無垢の木目の風合いを意識した様子の店内。きっと以前は座敷であったろうスペースが板張りになっている。 案内されたテーブルは厚みを残した一枚板。 幅がないのが、なんだかちょっと不思議な感じだ(笑)。
「酒徒庵」の口開けといえばやっぱり、山口の「flight of wharf」。 特別誂えの、ここでしか呑めないお酒は、活性にごり発砲純米生原酒。白濁りのグラスを口に含んで、皆んなが一斉に、おいしーと云ってくれるのが有り難い(笑)。 改めて、ボトルでいただくことにします。
まずはやっぱり生牡蠣から。 “本日の牡蛎”には、北海道・厚岸から長崎・雲仙までの9種類がラインナップ。 北から攻めるか、西から攻めるか、みんなして腕組み思案(笑)。
最初にお願いしたのが、三重県は、答志島桃取プレミアム。この冬は、鳥羽産の牡蠣をよく見掛けるのだよなぁ、とそんなことを思いながら、 檸檬汁をほんの少し搾って、ちゅるん。 潮の速い海が育んだ滋味が鮮やかに弾けます。
続いて、徳島は、鳴門ウチノ海。 ウチノ海は、内の海。 鳴門といっても渦潮渦巻く海峡では勿論なくって、 海峡近くの四方を山に囲まれた内海でめきめき育った牡蠣。これ、旨いです、憶えておきましょう。
最近ポピュラーになってきた福岡は門司の牡蠣。 殻付きに続けて、焼きをいただいてみます。生で愉しむ磯の旨味の鮮烈さが、火を入れることで丸く深みを帯びるのがよく判ります。
“酒徒庵名物”と謳うは、「牡蠣の味噌煮」。 こってりと煮〆たような、味噌漬けに近いようなヤツかと想像したら然にあらず。 それは、白菜なんぞの野菜と牡蠣とが仲良く小さな鉄鍋に。白味噌仕立ての牡蠣鍋の小型版、といったところでしょうか。
「flight of wharf」のボトルをあっという間に呑み切って、 次のお酒に選んだのが、東京は東村山・久米川の。 豊島屋酒造という蔵の仕込み6号直汲み無調整生 純米吟醸「屋守 おくのかみ」。 久米川に酒造メーカーがあるとは知らなかったけど、これがなかなか旨いンだ。
移転前のお品書きでも気になっていたのが、「バジルポテトサラダ」。葱の繊維を活かした、バジルを加えただけじゃない、個性派のポテトサラダだ。 「篠峯」のうすにごり ろくまる純米吟醸八反35号無濾過生酒あたりをお伴にね。
そして、牡蠣料理のラインナップから、「牡蛎ガーリックバター炒め」。薄く叩いた粉がバターをしっとりと包んで黄色くなっている。 口に含めば、ちゅるっと消えて牡蠣の旨味とニンニクバターの風味が交差します。
お酒を埼玉の「五十嵐」純米吟醸直汲み生M-310酵母に替えて、「鯖のへしこ」。旨味の凝縮した鯖の身を短冊に切った大根で挟んでる。 大根で塩梅を馴染ませつつ、糠の風味も合わせ愉しむ佳肴であります。
やっぱりこれは外せないと、「牡蛎フライ」。うんうん、ジューシーにして活性した身の美味さ。 衣も旨い気がします(笑)。
みんなで取り分けてシメましょうと、「牡蛎とあおさのチーズリゾット」。一見柚子胡椒にみ見えるのは、蟹味噌でしょか。 滲み出た牡蠣のエキスにあおさ海苔の磯風味がよく似合う。 今度作ってみようかな。
日本酒専門にしてJr.オイスターマイスター在籍牡蠣の店、四谷三丁目「酒徒庵」。「酒徒庵」はいまのところ、完全紹介制をとっていて、一見さんお断りとなっている。 日本酒を安く提供したいとの意図から少数精鋭での営業なので、 料理やお酒のオーダーや提供に時間の掛かることをあらかじめ承知して愉しみたい。
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「酒徒庵」 新宿区四谷3-11 第二光明堂ビルB1F [Map] TEL 非公開
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