
一度訪ねたことのある炭火やき鶏の「むさしや」を横目に路地のヒト。 真っ昼間の「盃横丁」は、折角の妖しさも極々控え目。

扉の脇につけた四角いアクリルのサインには、 武蔵野うどん専門店「なか屋」、そして”地粉100%”とある。


厨房の隅のコンロに載せた羽釜でぐらぐらと滾る湯の中にそろっとうどんを滑り込ませる。

その横のもうひとつのコンロには雪平鍋。 肉汁のネタには、豚バラ肉のみならず、刻んだお揚げもたっぷりの様子。 一杯づつ丁寧に仕立てることが、その所作からも窺えます。
当然ながらも手打ち手切りであることが、 平べったいところなんかが混じっていることで、よく判る。


硬過ぎず、柔過ぎず。 噛むほどに粉の滋味がじわっと伝わってくる。

「なか屋」のうどんは、サインが示すように地粉100%。 群馬辺りの?と問えば、 いえ、埼玉や北海道の国産小麦粉を狭山ヶ丘の田中製粉から仕入れている、という。 北海道の小麦粉が”地粉”かどうかの議論はさておき、 少なくとも使い勝手のよいオーストラリア辺りの粉を使ったり混ぜたりしている訳ではないことに敬意を払いたい。
そんな「なか屋」のうどんの特徴を象徴的に示すのが、蕎麦湯ならぬ「釜湯」。 つけ汁として濃いめに仕立てたツユをうどんを湯掻いた羽釜の湯でちょいと割って平らげてくださいと。 器に注がれたそのお湯は、羽釜に眺めた通りにおよそ澄んでいる。 頃合いをみながら残った肉汁に注いで小さなどんぶりを傾ける。 うん、飲むに加減のいい濃度にそこはかとない粉の風味が加わって、いい。
思い返せばいままでいただいた武蔵野うどんの店で、 いやすべてのうどんの店で釜の湯を供してもらった記憶はない。 妙なコシを無理くり与えようと、片栗粉やコーンスターチを混ぜ込んでいれば、 忽ちそれらが茹でる湯に溶け出して白濁してどろんとなることは想像されるところ。 打ち粉を叩いた地粉100%のうどんでは、 茹で湯を濁らせる程度が圧倒的に少ないってことなのでしょうね。
狭い厨房で工夫して打つといううどんは、いまのところ40人前程度という。 加水率や塩の加減を模索する毎日だそうだ。
昭和の匂い漂う、盃横丁の一角に武蔵野うどん専門店「なか屋」。


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「なか屋」 所沢市御幸町2-9 盃横丁内 [Map] 04-2939-4700 http://locoplace.jp/t000154205/
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