
それは確か、この春3月末頃のこと。
平成通り沿いの信号を渡ろうとして、
その向かい側にある筈の酒屋「入船屋」の看板が外されているのに気がついた。
もう既になにかの店に模様替えすべく、
内装の造作が始まっていたのです。
カウンターがあるし、きっと飲食店だね。
その時、右手の硝子に貼られていた空色のポスターが記す文字が「TONNEAUX」。

新しいお店の名前なのでしょうか。
それから月が替わり暫くすると、
準備整ったレストランが平成通りに颯爽とデヴューしていました。

ちょっと間を置いて、ランチに出掛けてみることにします。
突き当たりのテーブル席に座って眺める店内は、高くした天井がゆったりとして、
煉瓦と木目の茶系統で整えた心地いい空間になっている。




漆喰風の柱に掛けられた黒板には、Entrees、Specialities、Deserts。
そして、ワインのラインナップを伝える黒板も。

店頭に立て掛けたいた黒板が知らせてくれるランチメニューは、
その日の10食限定のプレートに数量限定のパスタ。
そして、きっと定番の「CHEF特製ラザニア」にトッピングあれこれ「カレーライス」というスタイルだ。
まずはその、”CHEF特製”というフレーズにも惹かれて、ラザニアを。
フレッシュサラダかスープかということで、スープを選んで、ね。
白いプレートに白いカップと白く四角いラザニア皿。

キャロット・ラペの鮮やかなオレンジが印象的。


折り重なったパスタとベシャメルとトマトソースと上面の焼き目の香ばしさとが渾然と味蕾を擽ります。
くどさを覚えないのは、
繊細にそれぞれのバランスがとれているからなのかもしれません。
そうそう、ここ「Les TONNEAU」のランチは、
例えば、ヴィシソワーズをはじめとする冷製のスープも旨い。



夏を過ぎて、温かいものになるのも愉しみです。
裏を返すようにして、平成通り。

店の横手にあるもうひとつの扉から中を覗いていたら、急に扉が開いて、どうぞどうぞとマダムに招かれてしまった。
以前の「入船屋」の面影を残すかのようなその一角は、
「Les TONNEAUX」併設のワインショップ。
そのままレストランの方へ抜けてゆけるのです。
例によって、”限定”に釣られて(笑)、
お願いしたのがその日の「ポークと野菜のカレーライス」。
ブロコリー、カリフラワー、人参にスナップエンドウの彩りが鮮やかだ。

どれどれとカレーを舐めると、たっぷり野菜由来の優しい旨みが馥郁として、仕立ての良さを思う。
随分と手間がかかっていそうな、そんな気もいたします(笑)。
日によって、牛スジのミートボールとか鶏肉と野菜、といったバリエーションがあるンだね。
さらに”限定”なのが、10食限りの日替わりのプレート。
ある日のそれは、「シュー・ファルス トマトフォンデュソース」。



ざっくり云えば、ロールキャベツなのだけど、ばしゃばしゃのスープで煮込んだまんまのヤツとは趣の違う。
がっしり詰まったファルシからの香りとキャベツのほの甘さを優しく繊細なトマトソースの甘さが包み込む。
ごろごろと載った野菜たち齧りつしながら、ね。

プレートに添えてくれるフォカッチャは、ランチの時間に間に合うように毎日焼いているものだそう。
温め直しとはちょと違う、温もりと香りの鮮度が嬉しいぞ。
八丁堀の老舗ワインショップが昇華して、
颯爽と現れたモダン・シンプル・ビストロ「Les TONNEAUX(レトノ)」。

訊けばつまりは、あの「入船屋」さんのムスコさんがこちらのオーナーシェフ。
シェフは、日比谷の「ラ・プロムナード」(いまはなき三信ビルにあった老舗フレンチだね)をはじめ、品川のANA系ホテルのレストラン、一時はスイスにもいて、イタリアンの経験もあるそう。
そんなシェフが独立したのが家業営む酒店のあった場所。
おかあさんは、お隣の装い新たなワインショップでニッコリ(笑)。
Les TONNEAUX(レトノ)が示す”樽”は、
やっぱりワイン樽の”樽”のことなんだろね。
肩肘張らないメニューを重ねた経験と培ったセンスと伸びやかな解釈で供してくれている。
今度は、ワイングラス片手の、夜にも行かなくちゃだ。
「Les TONNEAUX」
中央区八丁堀2-8-2
[Map] 03-6228-3138
http://www.lestonneaux.com/
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