ある朝の日経新聞にサントリーが仏オレンジーナ・シュウェッブス社を買収という趣旨の記事がありました。
紙面には買収・提携している他のブランドも補足してあって、その中に「モーツァルト・ディスティラリー社」という一節があるのを目に留める。
ちょこっと調べてみると、それはリキュールのメーカーらしい。
へーそんなブランドもサントリー傘下なんだ、と思ったその日。
在ザルツブルグのフルート奏者laraさんから、日本のツアーで「モーツァルト・リキュール」の小瓶を提供していただけることになりそうですと訊く。
ほー、なんというタイミング。
途端にどんなリキュールでどんな呑み方ができるンだろかと俄然興味が沸いてきました。
そんなこんなで、久し振りに銀座のバーへ。
店の名を
「HIGH FIVE」。
あの「ロック・フィッシュ」の入っているビルと云えば、ピンとくる方もいるでしょう。
「HIGH FIVE」は、26ポールスタービルの一角にあるんだ。
ウッディな印象の店内と一面のバックバー。
カウンターの椅子に腰掛けると、
バックバーを背にした「ニン!」とにこやかな上野さんの笑顔。
一気にひとを和ませてくれる、魅力的な笑顔だ。
laraさんが一輪の薔薇を差し出して、ひと通りのご挨拶。
今宵のチョコテルの会のメンバーは、
laraさんに
カクテル・マニアなつきじろうさん、
のむのむさんに
Mさん。
上野さんが背にしているバックバーの真ん中あたりにすぐに見つかるコロンと丸いボトルが「モーツァルト・リキュール」たち。
さてさて、どんな風に仕立ててもらったらいいのかな。
「モーツァルト・リキュール」には幾つかの種類があって、
まずは「ブラック」を使って。
ロングのグラスを並べる上野さんが口にしたタイトルは、「シトラス・ショコラ」。
ふたつのジンジャーエールから辛い方を選んで、ステアするは、モーツァルト・ブラックとジンジャーエールの出会い。
ほほー、力強いカカオな風味とジンジャーエールの辛甘い風味がくるくるとツイストしてるような、そんな呑み口が愉しいな。
そうそう、愉しいと云えば、ライムをピールするときの上野さんの所作。
ひゅっと搾ったところを追い掛けて、掌底を繰り出すように「はっはっ」と。
そう口に出してる訳ではないけれど、まさにそんなイメージのする動きなんだ。
そして、上野さんがそんなちょっと不思議な所作をグラスに施すのは歴とした理由がある。
ピールした際の果物の皮のスキンオイルには重い油と軽い油があって、重い油の方はすっと下に落ちるけれど、軽い油はそのままふわふわと空気中を漂う感じになる。
重い油の粒子は苦みを伴うのでそのまま避けておいて、漂う軽い油を寄せるように集めるように、「グラスに行きなさい」とばかりに「はっはっ」として、シトラスな香りをつけるのであります。
なるほどー。
ふと棚の左寄りをみると、緑色が個性なボトル「MIDORI」がある。
メロンなフレーバーと「ホワイト」に想像するクリーミーさがきっと合うのじゃないかなぁと上野さんに告げると、なんとその組み合わせは、上野さんがモスクワでプレゼンしたレシピに相当するものだという。
おおー(笑)。
早速そのカクテルをとお願いすると、上野さんが手にしたのがプラスチックのシェーカー。
ステンレスのものと違って柔らかいので、
クリームなカクテルや氷の破片をカクテルに残したくない場合に使うんだそう。
香港のかっぱ橋的なエリアで見つけて買い込んだというプラスチックのシェーカーを使っているのは、きっと自分だけだ、と上野さん。
「サントリー角」や生クリームもちょっと使ったショートグラスは、
その名を「トップ・スクープ」。
ふんわり白雪のような白が仄かに緑がかっている。
すっきりと繊細なクリーミーさとメロンの風味がすっと溶け込んでいて、
想像した以上に美味しい。
うーん、なるほどー。
それでは、オリジナルな「モーツァルト」はどうでしょう、と手にしたボトルは、金色の紙に包まれている。
その、「モーツァルト・チョコレートクリーム」のボトルのパッケージは、オーストリア、ザルツブルグで名物となっているチョコレート・トリュフ、「モーツァルト・クーゲルン」がそのモチーフとなっているそう。
モーツァルトのキャラクターを刻んだネクタイを首に揺らす上野さんが再びシェーカーをシャカシャカ振ってつくってくれたのが、カクテル「モーツァルト」。
チョコレートクリームに、黒糖っぽい蜜や生クリーム、ブランデー(クロバジェ・ルージュVSOP)、シナモン・リキュール(Kaneel likeur)、そして「ブラック」少々を添えたのがそのレシピ。
チョコレートの風味はやっぱり生クリームの生地によく合うのだけれど、それがとっても大人な奥行きのある呑み口になっていて、これまた想像した以上に旨い。
そしてさらなるエポックが、世界でも極一部の都市でしかお目に掛かれない、「モーツァルト」の新種ボトルがカウンターに鎮座していること。
それがクリームリキュールの「モーツァルト」にして、透明なボトルがクールな「Dry」。
無色透明のその滴に鼻先を近づけると、間違うことなき、カカオの香り。
口に含むと、冷たい当初はキリっとした刺激を見せるかと思うと口の中で温度が上がるにつれて、カカオ風味を膨らませてくる。
おほほー、面白~い。
「チョコレート・クリーム」は、チョコレートヌガーにミルクとチョコを加えて、キルシュワッサーなどのスピリッツをブレンドして寝かせてつくるけど、この「Dry」は路線が違っていて、カカオを素材にしたスピリッツそのものとも云えそうだ。
ボトルについた栞には、for exciting drinksとある。
laraさんたちが行った工場見学記にも登場しているぞ。
試しに、ライムとお友達にしてみて、とリクエストしてみる。
「ギムレット」の「Dry」版でしょうか。
今度はステンレスのシャーカーを振る上野さん。
さっきよりアクセントの強い振り方だ。
粒子の揃った美しいグラスの向こうに「Dry」のボトル。
絶妙なバランスの上にのっけてくれているものの、柑橘と真っ向勝負させるのは「Dry」の持ち味を活かせないのかもなぁと自分のイメージ不足をちょと反省(笑)。
でもこの「Dry」は断然面白い。
世界のバーのカウンターで話題になっていくのじゃないかなぁ。
そうそう、お隣でグラスを舐めては、「うん、おいしー」と瞳をきらっとさせていたのがlaraさん。
laraさんの日本ツアーは、この25日(金)の日比谷・松尾ホールが皮切り(チケットは
こちら)。
そして、長野から元旦・2日の岐阜、
4・5日の神戸と回るそうです。
上野さんが「STAR BAR GINZA」から独立して、
「HIGH FIVE」をオープンしてまだ1年ちょっと。
でも安定したこの愉しさはなんだろう。
同じカクテルは二度と作れず、ひとつひとつのグラスと一期一会で出口がないので止められない。
そう、上野さんはにこやかに実直に話してくれる。
留学経験と語学力を活かして「STAR BAR」在籍時に培った、国際的な交流や人脈も広いのだけど、妙な気取りは一切ないのもまた突き抜けた魅力です。
「HIGH FIVE」
中央区銀座7-2-14 第26ポールスタービル4F
[Map] 03-3571-5815
column/02916
まさぴ。さま。
トラックバックありがとうございます!!
ちょうどいま工場見学の記事をアップしていたところでした。
楽しい時間をご一緒させていただき、光栄でございました。
奥が深いですね、、カクテルの世界。。。初めての経験が世界クラスとは。
これからが思いやられるトコロです(笑
laraさま
愉しかったね~。そんな機会をくれて、ありがとーです♪
上野さんが一期一会というように、ボクら素人にはいつまでたっても判らないことばかりなのがカクテルの世界。ちょっとづつ愉しんでいきましょー(笑)。
Dryが個人輸入(?)されているとは驚きです。本国というか工場のある街にすらないので(笑)。
ジンジャエールとモーツァルトリキュールの組み合わせ、意外な感じですが、よく合っているんですね~。
どうしてもオーストリアに住んでいると、シュナップス同様にストレートで飲むことばかり考えてしまいますが、是非上野さんの様な素晴らしいバーテンダー氏の作ってくださる物も飲んでみたいです!
写真で見る限り、上野さんのところにはバー用ボトルネックがなさそうですね?
D様に送っていただきたいですね。
モーツァルト・リキュール、いい感じでしたね!
カクテル材料の組み合わせだけでなく、単体で温度を
変えるだけでも、ずいぶん面白い変化があるお酒で・・・
うーん、コンサート会場にマイ・シェーカー持ち込んじゃ
ダメかな?(笑)
上野氏の人柄の魅力とも相俟って、えらく楽しい夜でした♪
何かの祈祷!?のような所作は、あとで動画を少々・・・☆
Re:seppさま
なんで「Dry」が日本にあるんだ!と疑惑を呼んでしまっているようでしたらスイマセン。まだ売ってないモノですが、と補足するのが正しいのかもしれませんね。
ホワイト以外は、一杯のカクテルに整えるのが簡単ではないなぁという印象で、Dryを含め、まずストレートを愉しんで、とも思います。上野さんでよかった(笑)♪
えっと、ボトルネックというとどうもギターが思い浮かんでしまうのですけど、バー用ボトルネックというのはメジャーカップ的なものを指すのです?
Re:つきじろうさま
はい~、「モーツァルト」には、カクテルマニアをも唸らす面白さがあったですねー(笑)。
添付のレシピによるカクテルをその場で呑めたらいいかも。
でもまぁ、ホールとかの会場は、ルール縛りで柔軟な対応はしてくれないのが常だけどぉ~。
ええ?あれを動画で? 見た人が皆、上野教の信者になってしまう危険が(笑)。