大阪地下鉄千日前線から谷町九丁目を降りる。
地上へ上がると、近鉄・上本町駅のビルが交差点の向こうに見える、そんなロケーション。
千日前通りから離れて大阪城の方向へと北進すると、難波、日本橋の隣町であるというのに、あっという間にひと影が疎らになる。
妙に静かで、飲食店が盛業する雰囲気ではないなぁとやや不安になりながらさらに進む。
ここら辺りと周囲を見回すと、セットバックした建物の前に白い暖簾が揺れています。
そこが、手打ちうどんの店「皐月庵」だ。
うどん屋さんにしては、どこか静謐な印象のカウンター。
硝子越しの外に面して、麺打ち場がある。
手元の品書きと板壁の貼紙たちを交互に見比べて。
「皐月庵」はカレーうどんにも名があるそうので、まずはその基本形「カレーうどん」からお願いしてみたい。
細かく気を使っては、忙しなく動くオバチャンが奥の厨房に注文を通してくれ、それに応えるやや野太い声がこの店の主だ。
厨房の方から弾けたスパイスの飛沫が圧し流れてくるようにして鼻腔を擽る。
それを追い掛けるようにして、湯気を上げたドンブリがやってきました。
揚げが横たわり、玉葱のスライスや人参の千切りがトッピング。
蓮華でスープを啜ると、とろんとした中にさっき嗅いだ香りを確かめるように直接愉しむノリになる。
妙に辛い訳ではなくて、でもフツフツとじわじわとスパイスの波が寄せてくる。
辛いヤツを所望される方は、対価をちょっと足して、辛口、激辛、超辛、極辛の注文をすればよい。
そんなカレーを纏ううどんは、透明感のあるツルシコ麺。
コシの強さを強調するでもなく、でも柔なヤツとは一緒にして欲しくない、そんな感じ。
大阪うどんの有名どころ「釜たけ」はやや剛のイメージがあるのに対して、
こちらは太さも細目で嫋やかだ。
国産100%の小麦を、海水とほぼ同じ成分をもつという麺専用塩「46億年」を使って打つと云う。
品書きに示された「こだわりと素材」には、加減よく生地を捏ね、プレスするための基準値を見極めてあり、季節に左右されずに適切な熟成を果たすため測定器で塩分濃度をチェックし、自動的に温度調節のできる「恒温庫」で温度と時間の管理をしているという。
年季で磨きをかけた腕っ節で勝負してます的にも映るお店やご主人の風貌からは少々趣を異にする(失礼)、一種科学的な研究の成果を裏付けとしたうどんなんだ。
日を改めての谷町九丁目。
この日の目的は、ありそでなさそな一品「釜玉カレーうどん」です。
釜玉うどんは、ポピュラーであるけど、そこにカレーと名が付くうどん。
オバチャンが「食べたことありましたっけ?」と訊くのは、ドンブリ出してから初めて誤解に気づくような事態は避けたいからなのでしょう。
「食べたことはないけど、知ってます~」と応えて、茹で上がりを待ちます。
やってきたのは、釜上げしたうどんの真ん中に生玉子をのっけたうどん。
「皐月庵」ならではの変化球なのは、そこへカレーの粉末がトッピングされていること。
オバチャン曰く、「よーく掻き混ぜてから醤油を垂らして、ね」。
仰せの通り掻き混ぜて、醤油を垂らす。
混ぜが足りないとどこか風味が足りなくて、改めて底の方から天地返しするように混ぜ込むと、途端に旨みとスパイシーを明確に発揮し始める。
軽快でエッジの利いた香りの堪能は、市販カレールーではなし得ない、そんな気がしてくる。
20種以上のスパイスをホールのままじっくり焙煎し長期熟成、オリジナルな配合をしたのもだそう。
これで作ったドライカレーが喰いたい、そんな感じ。
谷町九丁目に「皐月庵」あり。
その「皐月庵」には、もうひとつ気になる器がある。
1日の限定数、たった7玉という麺を使う「中華そば」「中華つけ麺」。
盗み見した、そのドンブリは素朴な雰囲気のものだったけど、きっとうどん打ちに培った細やかな手練がそこにも発揮されていそうな気がするんだ。
口関連記事:
讃岐手打ち「釜たけうどん」で ちく玉ぶっかけ温いヤツの出色(09年05月)
「皐月庵」 大阪市中央区東平1-4-5 ライオンズマンション1F
[Map] 06-6762-1468
column/02886 @700-
まさぴ。さま。
なかなかショッキングな見かけの窯玉うどんです。。
だって、インスタントなんとか、の小袋を2つ開けて掛けたかのような量と盛り!
そんな本格カレー粉(?)に絡まるおあげも美味しそうです。
Re:ララさま
ね~、ありそでなさそでしょー。
スパイスへの探究あればこそ、こんなシンプルな発想の釜玉に辿り着くのかもねー。
ちょっと気の利いたカレー粉があれば、そっちでも真似っこできるのじゃないかな。
あ、冷凍うどんなんて売ってない?