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讃岐饂飩「恩家」で 90分後のひやかけ旨い出汁遜色ないうどん
学芸大学駅の東口。
その先の路地には、学大十字街という名前がついているらしい。
実のその小路へ行くのはこれで三回目。
さぬきうどんが旨いと評判の「恩家」を訪ねるも、空席待ちの列にびっくりしてそのままスールしたのが一回目。
やっぱり行列しているのを確認して、間を置いてと所用を済ませてからもう一度行ったら、「本日終了」の札に直面したのが二回目。
今日は一丁、並んでみてやろうとやってきたのです。
到着は、正午ジャスト。
空席待ちの最後尾につくとそこは、お隣のアパートの一番端の窓の前。
雨上がりの太陽がじりじりと後頭部を焼いて、路面からの湿気が蒸してくる。
ラーメン屋だったら特別珍しくもないけどなぁと思うものの、東京のうどん店に今まで並んだ憶えはほとんどない。
そう云えば、神保町の「丸香」には並んだっけな、などと回想しつつ、「散歩の達人」の読書タイム。
ところがこれが、恐ろしいほどに進まない。
10分過ぎて一歩進む、そんなテンポで太陽じりじりに晒されて。
連れを横から列に引き込む輩が何組もいるものだから、段々イラっとしてくる(笑)。
んー、それにしても進みが遅い。
硝子越しに覗くと、小さな子供連れと夫婦らしきカップルがとっくに食べ終えているのに、のんきに駄弁っているではないの。
行列に気を遣うような気概ないのかなぁと再びイラっとしていると、さらにびっくりすることが起きた。
「いやいや、仲間が先に中で待ってるのー」と手刀を切るようにしながら暖簾に直行する女ふたり組。
通る声の主は、あの久本雅美とその妹だ。
おいおい、並べっつーの(怒)。
随分並んでいたのに、途中で「本日終了」の足切りされちゃって、泣く泣く帰っていったお客さんもあるのというのに、芸能人は特別扱いとはお店も配慮が足りないよなー。
空席待ちのひと達にひと言声を掛けるでもなく店を後にするマチャミ御一行を見送ったところで、「お待たせしましたー」とお母さんから声が掛かりました。
ふー、やっとだーと時計を見ると、なんと1時35分。
1時間半も並んでしまったのね。
全然そんなつもりじゃなかったのに、席に着きながら、「ビール」と告げる。
これが呑まずにいられましょうか(笑)。
後ろで空席を待っていた数組のお客さんに心中で詫びつつ、キューっと呷るビール。
ふう、とひと心地。
品書きの「冷たいうどん」の章には、「ひやかけ」「ざる」「ぶっかけ」「醤油」「明太ぶっかけ」の五種がある。
「ぶっかけ」と「醤油」の違いが判らなくて、お母さんに「醤油は生醤油でぶっかけは出汁醤油?」と訊いてみた。
すると、どちらも出汁醤油だけど、それぞれにちょと違う、と云う。
んー。
ま、いっか、と「ひやかけ」をお願いして、ビールにあてにもと天ぷらを添えてもらう。
「ひやかけ」の出汁は、正直旨い。一方、その汁に浸ったうどんそのものは讃岐にしては細身で、
たっぷりとした量感のあるコシは、ない。
口滑りは艶かしくあれど、まぁ、普通に遜色なくいただけます、ってところか。ちょっと拍子抜けして、このうどんのためにイラっとしながら1時間半も炎天下並んだのかと複雑な気持ちに包まれる。
んー。
試しに卓上にあった醤油注しを小皿にとって舐めてみると、なるほど出汁醤油で、なかなかに塩辛い。
こっちの方がうどんの魅力が真っ直ぐ伝わるのかもね。
でももう、また再び並ぶことは想像し難いのが切ないなぁ。
お母さんはじめ、スタッフのひと当たりの柔らかさが救いの讃岐饂飩「恩家」。忙しなくて落ち着かない店にはしたくないのだろうけど、是非如何に回転をよくするかについても工夫を凝らしてほしいなぁと思います。
「恩家」 目黒区鷹番2-20-19 [Map] 03-3793-3722