そこは不忍通り沿い。
そのまま千駄木方面へ進むと、
バー「根津BAR」のある懐かしい路地が見つかる。
根津神社入口の信号に佇んで、
神社の裏手方向を見遣れば、
讃岐饂飩の「根の津」を思い出します。
それとは逆方向に信号を渡り、そのまま歩みを進めて、
ココを左手に進むと津軽の味の「みぢゃげど」があるなぁと思う処。
そこをふいと右手に折れる。
折れてすぐに、染物の「丁子屋」さんの佇まいが目に留まるけれど、
その手前に一間にも届かないような狭い間口が奥へと続く門構えがある。払う絣の暖簾には、「鷹匠」の文字が透けています。
両側を竹塀にみっしりと挟まれながら、
奥の暖簾を目指してずずずいっと侵攻する。暖簾の奥から温かな灯りが洩れてきます。
店内に入ると、右手の硝子越しにゆったりとした打ち台があって、
その手前に、うどんを打つ姿を被り付きで眺められそうなカウンター席がある。
下足を脱いで上がった板の間には、
八人掛けほどの長座卓が三つの川に分かれて置かれてる。
促されるまま一番奥のテーブルの座布団に腰を下ろしました。
まずは蕎麦前をちょろっと引っ掛けようと、
宇都宮の「四季桜 黄ぶな」を燗にして。気がつけば、複数の女性ひとり客がお蕎麦の茹で上がりを待っているようです。
燗酒のお供にと、「酒肴盛り合わせ」。板わさに玉子焼き、白菜漬け、蓮根の金平に小女子、そして味噌などが、
いい具合の量感で載っています。
うーん、お酒のお代わりしようかな(笑)。
やっぱりどうしても気になるのが、テーブルの隅に置かれた和紙張りの箱。
正面の取っ手を抓んで抽斗を引き開けて、届いた「板海苔」を挿し入れる。そして、おずおずと焙炉(ほいろ)の電燈をスイッチオン!
海苔が熱せられパリッとなったところをいただくってぇ寸法です。
小さな炭かなんかで炙る方が、そりゃ粋だけど、なかなか管理が難しいものね。
大事に大事に舐めてたお銚子が空になったところにお蕎麦の膳が到着しました。ご注文は、「鴨せいろ」であります。
ほんのりと翠色がかった蕎麦は、
ドンと蕎麦切り包丁が落ちてスパッと切れたのが窺えるようなエッジの立ったもの。もっさりせず、すっすと粋に啜るのが似合う蕎麦だ。
お相手の汁もまた、じっくりと旨味を湛えながら、
濁りなくすっきりと迫る。鴨肉も柔かだなぁと思っていたら、その脇からつくねが顔を出す。
どちらかと云うと、脂がたっぷり滲む鴨汁が好みなのだけど、
これはこれで、何の文句もなく、美味しくいただけます。
タイミングよく蕎麦湯の湯桶をいただいて、お猪口に注ぐ。わざわざ拵えたものではなさそうで、辛汁の出汁の旨味が改めて開いてきます。
根津の静かな裏通りに、手打そば「根津 鷹匠」の暖簾が揺れる。月曜・火曜定休の「根津 鷹匠」は、営業時間が若干変わっていて、
営業時間は、朝7:30~9:30と昼12:00~18:00まで。
気合の入ったパン屋さんか、はたまた市場御用達のお店のような朝営業が、
手打ち蕎麦の店として特筆ものでありましょう。
例えば、朝7:00から営っている場外の「長生庵」も、手打ちではないよな気がするしね。
そして、早起きの因果は巡ってか、通しで営んだ午後の仕舞いが夕方6時。
勤め帰りに寄り道してってな訳にいかない時間割りが、
わざわざやってくる、その気のある客のみを選別することになってるようにも思います。
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「根津 鷹匠」
文京区根津2-32-8 [Map] 03-5834-1239