大阪は福島の、路地に犇めく飲食店の狭間に一軒のバーがあります。
その名を、バー「カモメ」。
その名前の響きからは、なにか、港町の波止場の近くで灯りを点して船の帰りをじっと待っているカウンターをイメージしたりする。
寒い地方ではなくて、南九州か四国のどこか。
ラウンドするタイル地と滑り出し窓のつくる光景は、米軍の残り香のある沖縄の裏通りも似合いそう。
赤青白のサインポールを置けば忽ち、昭和な映画のセットにあるBarberだ。
カウンターには先客が三人さま。
白い壁に長板をぶつけた意匠の棚に「ハイボール」と貼ってあり、反射的に「ハイボール!」と口にします。
「カモメ」のハイボールの基本形は、「White Horse」と「Wilkinson」に氷がひとつ。
千代紙のような柄を織ったコースターに載せられたグラス。
黒板には、「オイルサーディン」「ドライカレー」「めざし」「おおつぶオリーブ」「板わさ」「チーズいろいろ」などと、お酒のお供のバリエーション充実。
築地「やまだや」で感心した「豆腐の味噌漬け」からの連想もあって、「トーフのみそ漬け」を。
またーりとしながらしつこくない食べ口は、日本酒にもシングルモルトにも合いそうだ。
ってことでもう一杯ハイボールをと、今度はあの「白州」で。
ふと棚の右隅あたりをみると、シルエットは「山崎」のそれに見えるのに、なにやらラベルには違う文字が窺えるボトルがある。
あれってなに?と訊いて、手元にしたボトルのラベルには「山崎」ならぬ「吉崎」とタイトル。
”TATEYAMA PURE HEART WHISKY”、”aged 40 years”ともある。
コレ、今は靱本町の方のお店にいる店主立山氏とかねてより親しい常連が残した創作ラベル。
なはは、ぱっと見それっぽくみえるあたりが秀逸で、洒落が利いてて面白い。
「くん玉」を齧りながら、もう一杯だけっ、と棚から「THE BALVENIE 12年」。
DOUBLEWOODとあるのは、醸したオークのバーボン樽からフィニッシュをシェリー樽へと移し換えていることを指しているそう。
円やかなという印象が強い、シングルモルトだ。
レトロな表情を残すバー「カモメ」。
今は、バーテンダーとしての顔つきも魅力的なふたりの女性がカウンターを守っています。
口関連記事:
居酒屋 「やまだや」 で驚嘆感心絶品佳品の酒肴たち(07年12月)
「カモメ」 大阪市福島区福島5-12-17 06-6451-1778
column/02633 @4,100