店内に先客はない。
端に座るのも妙な気がして、コの字型のカウンターの中央に正対して腰掛けました。
キョロキョロとテーブルの上や周囲の壁を見回してもメニューらしきものはない。
宣言通りお冷が出てくる気配がないどころか、既に調理を始めている様子。
唯一メニューが故に注文を訊く必要もないらしい。
微妙に張り詰めた空気が流れる。
これで厳ついオヤジがカウンター内にいたりすると、余計な緊張を強いられたりするところだけれど、女性店主にそれはない。
じっと黙ってその「ビーフカレー」を待つ。
お待たせしました、と目の前に現れたプレートを見て、さらに絶句する。
皿の右側7割のスペースに人参のペーストにタバスコをを溶いたような色合いの海が広がっている。
左手にライスの小山。
やっぱ辛いんだろな~と、サラサラのスープを掬った後にライスを載せて、恐る恐るスプーンを口へと動かす。
コホコホ。
思わず咳き込んでしまったけれど、慣れるに従ってその辛味と味わいの奥行きがどんどん深くなっていく。
一気呵成に食べ終えると、間髪入れずに抹茶のアイスが出てきて、口腔のヒリつきを癒してくれる。
横浜の三渓園の近くにもお店がある云々の会話を交わした後の帰り際にひと言。
「お腹のためにもすぐに水分を摂らない方がいいですよ」。
すると、お腹がポカポカしてきて、それが妙に愛おしくて、特別水が欲しくないのが不思議だ。
店にあったシートによると、たっぷりのニンニクと各種スパイス、小麦粉をじっくり炒めたところへ特製のスープや肉・野菜を入れて長時間煮込み、蕩けたところを裏濾ししてあるという。
突如として無性に食べたくなる日が遠からず訪れるような気もする。
それはそうと、どのあたりが”英国風”なんだろうね。
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