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酒の店「笹新」で葱鮪〆鯖煮鰯慈姑揚げ秋刀魚梅煮ぬる燗の沢の鶴名酒場笹新の交叉点

ご存じ、下町情緒漂う人形町。
江戸初期には、幕府公認の遊郭=元吉原があったと知れば、なんとなくその残り香が微かにあるようにも思えてくる。
今は街の中央をおよそ南北に走る幅員の広い人形町通りと、人形町通りと人形町交叉点で交叉する区道とが人形町の幹線道路のような気もするが、然にあらず。
下町・人形町のメインストリートと云えばそれは、人形町通りと直交する甘酒横丁だ。

そしてその甘酒横丁と交わるのが大門通り。
人形町通りのふた筋東を走る大門通りは、
吉原が今の人形町界隈にあった名残とされており、
所謂吉原大門が通りの何処かにあったのでしょう。
そんな甘酒横丁と大門通りとの交差点に面して、
一軒の居酒屋がある。
そうそれは、人形町のヘソだとひとり勝手に思っている、
ご存じ、酒の店「笹新」だ。

“笹新の交叉点”に宵闇が迫る頃、
「笹新」のお店の看板に灯りが点る。 待ち兼ねたように吸い寄せられていく、
そんなご同輩がきっと沢山いる(^^)。

店内は、寄せ並べられたテーブル二卓に、
変形コの字のカウンター。 コの字の一辺は、お店の隅切りに沿うように、
斜めに設えられている。
嬉々と縄椅子のひとつに腰掛けると同時に、
卓上の「本日のおすすめ」を眺めます。

“本日のお刺身”に「自家製〆さば」があれば、
当然のように註文してしまう。
切り口も凛々しく、〆具合の佳き。 すっかり潰したじゃが芋とゴロゴロを残したじゃが芋。
わざわざそんな合わせ方をしたかのような歯触り。
「ポテトサラダ」もまず欲しいところです。

卓上の大皿に目を遣れば、
自ずと惹かれる「煮いわし」の残りがもう数匹。 食めばほろほろと崩れる鰯の旨味。
生姜の香りも煮汁の味わいも堪りまへん(^^)。

燗のお酒をお願いすると、
目の前の燗酒器の湯殿に徳利が浸る。 熱燗の酒は、表の看板にもある「沢の鶴」。
お猪口にある兎のイラストは、なんだったかなぁ。

「笹新」のスペシャリテのひとつだと思うのが、
“江戸の味”とショルダーフレーズを抱いた、
そう「葱鮪(ねぎま)」だ。 タレの味の滲みた鮪のホロホロ。
そして、鰤大根よろしく、
鮪の旨味を引き取るように含んだ筒切りの葱。
厨房から漂ってくる美味しい匂いは、
この「葱鮪」を炊いた匂いみたい。
ぬる燗の「沢の鶴」が進んで困ります(^^)。

煮鰯もいいけれど、
「さんまの梅煮」もまた渋い。 梅干しの香りと酸味が秋刀魚に合うって、
一体全体誰が思い付いたのでありましょう。

品札に見付ければ、
不思議と註文したくなるのが「くわい揚げ」。
栗のようなほくほく歯触りが、いい。 「鯵フライ」はと云えば、
想定外にふわっふわの身肉で吃驚だ。

ふわっふわと云えば、
「自家製さつま揚げ」もまさにふわっふわ。 濃い目の揚げ色とその中のふわふわとのコントラスト。
勿論、おろし生姜がお供であります。

人形町は、甘酒横丁と大門通りの交叉点、
“笹新の交叉点”に酒の店「笹新」は、ある。 「笹新」の創業は、1970年(昭和45年)。
甘酒横丁沿いに隣接する新川屋佐々木酒店が営む、
人形町を、いや東京を代表する、
名酒場のひとつと云って憚ることはない。
その設え、日本酒を供する構え、酒肴のあり様、等々。
奥の厨房とカウンターの内側との連携がまた素晴らしい。

新川屋佐々木酒店のWeb、
「2023年8月1日 ~笹新 休業のお知らせ」
では、
弊店板前が怪我の手術・リハビリをする事になった為、
しばらくの間「酒の店 笹新」を休業させて頂く事になりました、
とあり、数カ月程度の休業を見込むとある。
そんな休業が1年近くにも及んでいる。
きっと色々な事情があるものと思うので、
ここは静かに再開を待ちたいと思います。

「笹新」
東京都中央区日本橋人形町2-20-3 [Map]
03-3668-2456
新川屋佐々木酒店:https://blog.sasas.jp/

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