新しい空港に降り立って、滑走路の向こうに広がる白保の海を眺めつつ、開港してからもう二年半近くが過ぎようとしているのかと時の流れの早さを思わずにはいられません。
いつものホテルは相変わらずの人気のようで部屋を確保できず、以前から考えていた民宿泊にすることに。
今回のお宿は、あの「辺銀食堂」のすぐ近く、民宿「楽天屋」にお世話になりました。
タクシーの運ちゃんに薦められた居酒屋さんで夕食をと思うも、
行ってみると、妙に真新しくて怖気づく(笑)。
何処か他を当たってみようと、
トニーそばこと「栄福食堂」の通りをなんとはなしに渡り、
所々で灯りの点る横丁を往きます。
おでん・小料理と示した「もと」というお店がいい感じ。
でも、閉じた扉を開けるのに勇気がいる感じ。
意を決してエイ!っとばかりに扉を開けると、
ご近所のオジイオバアが一斉に振り向く!
あ、すいません、満席ですねと慌てて扉を閉じます(笑)。
その斜め向かいでは、魚屋の中にテーブル置いて吞んでる、
そんな店もあるけれど、そちらもどうやら満員状態だ。
なかなか混んでいるのねとその先に歩みを進めると、
「Nana Cafe」の並びにいい顔した居酒屋がある。ここはいいぞとピンときて、早速突撃したのが、
大衆酒場と謳う「魚仁」であります。
「魚仁」といえば、あの月島の「魚仁」を思い浮かべる。
遥か遠く離れた石垣で同じ名前に出会えるとは、
奇遇というか、なんというか、ちょっと面白いよね。
快活にして超~ウエルカムなお迎えを受けて、
運よく空いていたカウンターの真ん中に滑り込む。第一声は勿論「オリオンを!」。
お通しのゆしどうふがイキナリ旨い。お通しが美味しいとか気が利いていると、
俄然期待度が上がってきますよね。
石垣で枝豆?と思いながら「焼き立て枝豆」を註文むと、
気風のいいお姐さんが鍋で塩煎りしてくれる。熱々の枝豆の旨いこと美味いこと。
ぐーーっとオリオンのジョッキが傾きますって(笑)。
てっとり早そうなところでと、
「石垣牛の牛すじ 韓国風煮込み」。これもまた勘所を踏まえたイケるヤツ。
石垣牛スジの甘い脂と滋味がふつふつと滲んで、
お皿傾けてぐーっと喰らいたい衝動に駆られます。
「オリオン」から「於茂登」に切り替えたところに、
「ミジュン唐揚げ」のお皿が届いた。「ミジュン」とは、和名で「ヤマトミズン」という
イワシの仲間であるらしい。
鰯としてはコロンとして、細長い鯵のようなそんな小魚。
揚げ立てをハフホフいいながら齧り付けば、ああた。
顔見合わせて、うんうん頷くことになります。
ヤングコーンに茄子、蕃茄トマトに陸蓮根オクラ、隠元豆。同じ揚げ物だけれど、
「夏野菜の天ぷら」はまた美味しさのベクトルの向きが違う。
噛んだらそれぞれの表現で野菜の鮮度が弾けてくれる。
石垣で島の野菜たちの天麩羅といえば、
真っ先に「森の賢者」のそれを思い浮かべるけれど、
どっこいこれも負けてない美味しさです。
マース煮で思い出すのは、
宮良殿内(みやらどぅんち)近くの島料理「ひゃみく屋ぁ」。
すべてのお皿がたっぷり盛りなので、
気になりつつも、食べ切れないからやめておけと、
店の大将に窘められてありつけなかったマース煮(笑)。
カマ、カブトで6銘柄も用意のある中から、
「ミーバイカブトのマース煮」をお願いしました。ミーバイとはつまりは、ハタのこと。
ダイビング中には、
赤ハタとかユカタハタとかの姿を愛でることが少なくない。
そのハタの仲間のカブトを塩煮したもの。
骨の間の身肉をこそげるようにしてしゃぶると、
期待通りの甘美な滋味。
スープに溶いたアーサーもいい味出してます。
そんなこんなで気に入ってしまったので、
短い石垣の滞在中にもかかわらず、裏を返そうと、
ふたたびこの裏通りへとやってきました(笑)。
いつもお世話になっているダイビングショップ、
「Yellow Submarineイエサブ」スタッフのマキちゃんによると、
港にも近い繁華街「美崎町」に対して、
この辺りは「十八番街」と呼ばれる、最近再注目のエリアだそう。
この界隈は元々、所謂歓楽街、夜の街であったそうなのだ。
なかなか妖しい空気が漂うような気がしていたのは、
決して気のせいなんかじゃなかったのであります。
妙に気になるスナックもあったりしますしね(笑)。
お仲間をひとり増やして今度は板張りの間へ。
やっぱり口開きは、オリオンのジョッキです。
石垣島でもっとも漁獲量の多いのが実はまぐろ類。
まぐろ料理専門店「ひとし」なんてお店が繁盛するのも、
そんな背景があってのことなのだろねと思ったする。
そんなことも頭の片隅に浮かべながらいただいたのが、
「本鮪中トロ」です。細やかに脂の挿した甘みと鮪独特の酸味とが塩梅よく均衡した、
珠玉の鮪に文句なし。
もしかして築地からやってきてるんじゃないのかな、
ってことだけがちょっぴり複雑な気分を過ぎらせます。
初めてお邪魔した際にも気になっていた、
マングローブ蟹「ソフトシェルクラブの唐揚げ」もご註文。その名の通り、不思議なくらい殻が柔らか。
揚げてさっくりとして、
薄く纏った衣と相俟って素敵に旨い。
蟹にはちょっと申し訳ないなんて思いつつ(笑)。
「島豆腐の厚揚げ きざみ島らっきょうと山椒ソース」の厚揚げは、
成る程、普段いただいている厚揚げとは豆腐自体のコクが違う感じ。コクある芳ばしさを山椒のソースが軽快に仕立てています。
「やんばるあぐーとほうれん草の柚子こしょう和え」でも、
和えた柚子胡椒の加減の良さがあぐー豚の甘さを引き立てる。お代わりしようかな(笑)。
ミジュン唐揚げ、サネラー唐揚げ(グルクンの稚魚)、
アバサー唐揚げ(ハリセンボン)に並んでた唐揚げシリーズのひとつ、
「水たこ唐揚げ」も註文んでみた。オオダコともいわれる大振りな蛸がゆえ、
大きな吸盤が目を惹く小皿。
想像以上に滋味深く、これもまた、
なんだか笑っちゃうくらい旨いのだ。
そうそう、定番系メニューから、
「点心風ラフテー」なんてのもいただきました。濃密に迫るラフテーも好物だけど、
こうして蒸し上げて、しっとりさせたラフテーなんてのもオツなもの。
こってりはもうそうそろ、というオジサマはもとより、
女子受けもするんじゃないでしょか(笑)。
石垣の元歓楽街、十八番街に大衆酒場と謳う「魚仁」がある。訊けば、主要スタッフは東京からやってきた面々だそう。
島の食材に日本全国から取り寄せる食材を掛け合わせて、
島の酒肴の新境地を魅せてくれているような印象を受ける。
旧来からの沖縄・八重山の料理を悪戯に弄り回す訳でなく、
きちんと考え抜いて昇華させている気がする。
月島「魚仁」の豪快さと対比するのも面白かったりなんかして(笑)。
「魚仁」
石垣市石垣7-3 [Map] 0980-87-0135