
昼間はシャッターが降りていて、
そんな、ちょっと小粋な和食処があるなんて判らない。
偶々、半開きになったシャッターの下に木板の看板を見つけても、そこには「大根」のふた文字。
八百屋さんには見えないけどね(笑)。
茅場町の和食処「大根(おおね)」は、
なかなかの人気店。
ふらっと立ち寄ろうとして、
何度満席の憂き目をみたことか。
予約を入れて、お邪魔いたしましょう。
4名さまですが、カウンターの角になるかもしれませんと、
そう了解して出掛けたところ、テーブル席へのご案内となりました。
先付けは豆腐の擦り流し。

緩くせず、豆腐の量感をこんもりとそのまま伝えてなお、出汁との塩梅よろしい感じ。
つるむらさき、の文字に反応して、「つるむらさきと豆の明太和え」。

歯応えと青みの濃いぃ蔓紫をどう酒肴に仕立ててやろうかと腕組み思案する、
そんなご主人の様子を勝手に想像しつつ(笑)、いだきます。
「田酒 特別純米」をいただいて、迎えた長皿は、お造りの三種盛り。
細かく包丁を入れてくれた「白いか」は、その烏賊独特の甘さが鮮やかに。


くちゅこりっとする下足の甘さは、また別のもの。
「金目鯛」は、銚子から。

細やかで豊かでかつ品のいい脂の甘みに思わず頷く。
そして真打ちは、松輪の鯖の「しめさば」。

浅めの〆具合の鯖の身が、蕩けるような旨味で誘います。
うん、美味い。

そんなお造りを堪能しつつ、
日本酒の嗜みを「与右衛門 特別純米酒 無濾過 美山錦」から、
「風の森 純米吟醸無濾過原酒」へ。
料理が先かお酒が先か、
酒肴のお品書きに寄り添うようなお酒のラインナップに一種の信頼を覚えます。
蒸篭の蓋をすっとずらせば、「魚のすり身ふわふわシュウマイ」。

麺状の皮を載せた大きめのシュウマイを湯気の中から取り出して、
辛子醤油にちょんとつけて、ふーふーしながら口へ運びます。
その名の通り、ハンペンのそれのように魚のすり身がふんわりと迎えて、
温かな味わいに満たされます。
喰うのか、ほんとにオイラを喰うのか?と訊ねるかのような「げんげの一夜干し」。

すまんね、と小さく呟きながら頭から齧ってしまいましょう。
「床ぶしの含め煮」は、見るからに柔らかそう、美味しそう。

そっと口に含めば、期待に違わぬ独特の柔らかな歯応えと深くて明瞭な滋味。
お酒を誘います。

熱々で登場は、石川小芋の「きぬかつぎ」。
持った手をアチチとしながら、つるんと押し出すように剥くように。
滑るような甘さに安らぎます。
「鯖のへしこ」「ほやの塩辛」「鮎の親うるか」と並ぶ「酒の肴」ラインナップから、
「かつおの酒盗とクリームチーズの和えもの」。

塩っ気さえも塩梅よく添える刻んだ酒盗。
発酵系×発酵系×発酵系の取り合わせの相性の良さを体感することとなりました。
「玉櫻 島根 純米濾過原酒 五百万石」。
最後は、再びの「田酒」をぬる燗で。
片や、「のどぐろのみりん干し」。

優しく凝集した旨みにそっと香ばしき味醂の風味。
飾りなき佳品で御座います。
呑ン兵衛心をすっと満たす酒肴とお酒の和食処「大根(おおね)」。

硝子越しに店内を覗けるのに、どことなく隠れ家チックな雰囲気も帯びている。
カウンターに席を得て、若きご主人の手許を眺めながらお猪口を傾けるのもいいね。
「大根」
中央区日本橋茅場町3-8-10 リベラ茅場町1F [Map] 03-3666-6979
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