武蔵野うどん専門店「なか屋」で 新進気鋭の武蔵野うどんに感心

nakaya00.jpg山車祭りの折りには、なかなかの賑わいをみせる所沢銀座通りも、普段はひと影も割と疎らな感じ。 嘗てあったアーケードはとっくに取り払われて、通りに沿って並んでいたお店たちがマンションに代わっていっている。 飛行機新道の始点でもある交叉点(俗に「ねぎし」の交叉点と呼ぶ)から眺める通りの両脇にはにょきにょきとマンションの外形が映る。 そんな銀座通りの一角から伸びる路地が「盃横丁」。 昭和の匂いを漂わす古き手描き映画看板が迎えます。

一度訪ねたことのある炭火やき鶏の「むさしや」を横目に路地のヒト。 真っ昼間の「盃横丁」は、折角の妖しさも極々控え目。nakaya09.jpg大谷石の外装重厚なClub「ACB(アシベ)」は今も営業しているのかなぁと立ち止まっては、 その奥へと進みます。 質屋「港屋」の板塀に沿って右へ折れると、 「盃横丁」のヘソとも思うバー「Thirty three」の半円のテントが見つかる。 その並び、つまりは「盃横丁」の東の入口のとば口に開店した「なか屋」さんがこの日の目的地です。

扉の脇につけた四角いアクリルのサインには、 武蔵野うどん専門店「なか屋」、そして”地粉100%”とある。nakaya01.jpg新装ながらも専門店としての気概を感じさせる佇まいではありませんか。

nakaya02.jpg 「なか屋」は、ファサードから想像される通りのカウンターの店。 お食事メニューは、「肉汁うどん」は勿論のこと、「ざるうどん」に「野菜汁うどん」、そして「鳥汁うどん」「とろろうどん」「にしんうどん」なんかもラインナップ。 武蔵野うどん専門店としては、初っ端からバリエーションあり過ぎとも思うも、 そんな文句もお門違い(笑)。 素直に「肉汁うどん」をお願いしましょう。 大盛りでも値段変わりません、というのでそのように。

厨房の隅のコンロに載せた羽釜でぐらぐらと滾る湯の中にそろっとうどんを滑り込ませる。nakaya03.jpgその湯は何杯かのうどんを既に湯掻いているはずなのに、およそ澄んでいるように見えます。

その横のもうひとつのコンロには雪平鍋。 肉汁のネタには、豚バラ肉のみならず、刻んだお揚げもたっぷりの様子。 一杯づつ丁寧に仕立てることが、その所作からも窺えます。

当然ながらも手打ち手切りであることが、 平べったいところなんかが混じっていることで、よく判る。nakaya04.jpgnakaya06.jpgつるっとした見た目のテクスチャーを愛でてから、具沢山の肉汁に浸して啜ります。

硬過ぎず、柔過ぎず。 噛むほどに粉の滋味がじわっと伝わってくる。nakaya05.jpg武蔵野うどんの看板を掲げながら、 なんだか讃岐うどんみたいなうどんになっちゃってるうどんも世にあるけれど、 決してそうではない気概もまた噛むほどに。

「なか屋」のうどんは、サインが示すように地粉100%。 群馬辺りの?と問えば、 いえ、埼玉や北海道の国産小麦粉を狭山ヶ丘の田中製粉から仕入れている、という。 北海道の小麦粉が”地粉”かどうかの議論はさておき、 少なくとも使い勝手のよいオーストラリア辺りの粉を使ったり混ぜたりしている訳ではないことに敬意を払いたい。

そんな「なか屋」のうどんの特徴を象徴的に示すのが、蕎麦湯ならぬ「釜湯」。 つけ汁として濃いめに仕立てたツユをうどんを湯掻いた羽釜の湯でちょいと割って平らげてくださいと。 器に注がれたそのお湯は、羽釜に眺めた通りにおよそ澄んでいる。 頃合いをみながら残った肉汁に注いで小さなどんぶりを傾ける。 うん、飲むに加減のいい濃度にそこはかとない粉の風味が加わって、いい。

思い返せばいままでいただいた武蔵野うどんの店で、 いやすべてのうどんの店で釜の湯を供してもらった記憶はない。 妙なコシを無理くり与えようと、片栗粉やコーンスターチを混ぜ込んでいれば、 忽ちそれらが茹でる湯に溶け出して白濁してどろんとなることは想像されるところ。 打ち粉を叩いた地粉100%のうどんでは、 茹で湯を濁らせる程度が圧倒的に少ないってことなのでしょうね。

狭い厨房で工夫して打つといううどんは、いまのところ40人前程度という。 加水率や塩の加減を模索する毎日だそうだ。

昭和の匂い漂う、盃横丁の一角に武蔵野うどん専門店「なか屋」。nakaya07.jpgnakaya08.jpg開店は、11年の11月15日。 蕎麦屋の経験を活かしてと聞けば、「釜湯」の提供も頷ける。 武蔵野うどんの老舗たちを食べ歩いたのかと訊けば意外や、 「小島屋」も「きくや」もまだ訪ねてないという。 先客さんが退けたところで、 “糧”や”茹で置き”、”バラ肉のアクや脂”などについてお節介な意見交換(笑)。 ヒマを見つけては他の武蔵野うどん店も散策しつつ、 いまひとつ判然としない武蔵野うどんの定義を明らかにして欲しいな、なんて思います。

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「なか屋」 所沢市御幸町2-9 盃横丁内 [Map] 04-2939-4700 http://locoplace.jp/t000154205/
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