座り心地のゆったりしたカウンターのソファーに腰掛けて、 眺めるFOODメニュー。 やっぱり、冒頭に書かれた「京都竹中 特選缶詰」が気になります。 缶詰「牡蠣の燻製」のお願いと合わせて、しゅわしゅわをオーダー。王冠を外し、ガスをすっと抜く常磐色のボトルは、 “L-P”こと、「ローラン・ペリエ ブリュットL-P」であります。 グラスの底から細やかに涼しげに立ち上る幾筋ものコルドン。鼻先で弾ける泡が運ぶ香りを愉しんでから、すいっとグラスを傾けます。 酸のキレとそれを一瞬の間を置いて追い掛ける膨らみある円みとが描く輪郭。 エレガントにして、バランスのよい美味しさを素直に訴えると、 仰る通りとばかりに頷いてくれるバーテンダー氏。 最近ラベルが変わったのですけど、これは変わる前のラベルのものですねと。
そこへ、その名の通りの缶詰がやってきました。 「京都竹中」の牡蠣燻製缶詰は、 久美浜(京丹後)で採った旬の牡蠣をボイルしスモークし、オイル漬けしたもの。 そこへ、たっぷりの葱をあしらう等して、オーブンで焼いている。焦げ目のある葱と一緒に綺麗に凝縮した牡蠣の身をフォークの先で刺して、 どれどれといただきます。 おほほほ、いいなぁ、イケるなぁ。 柔らかなその身には、仄かな薫香とオリーブオイルのまろみが加減よく滲みて、 丁寧に手塩に掛けたような美味しさがある。そこへ、L-Pの泡を注ぐと、これまたなんとも絶妙な組み合わせ。 白ワイン以上の相性の良さはどこからくるのでしょう。
異なる品種、畑、異なる収穫年のリザーブワインを巧みに調合(=アッサンブラージュ)することによるバランスとボトルの中で行う二次発酵が齎す繊細な泡が、 柔らかで奥行きのある味わいと料理との相性の良さを届けてくれるのだね。
メロンならぬ、トマトと生ハムとのメニューを見つけて、 「パルマ産の生ハムとフルーツトマト」。北海道産と訊くその名の通りフルーティなトマトに、 生ハム仄かな塩っ気と柔らかな脂の旨み。 その出逢いの妙に感心しつつ、 L-Pのグラスを傾けてまた、うんうんと頷いてしまうのです。
もう一品の缶詰がどうしても気になって(笑)、「オイルサーディン」も。この酒肴は、ただ缶詰を開けて温めただけのものではなくて、 油を切ってから醤油日本酒で調味してある。 ころんとした山椒の佃煮や鷹の爪の辛さがぴりっと利いていて、 意外なほどあっさりと上品な仕立てなのだ。 こんな佳肴に寄り添うように華やかな膨らみを与えてくれるL-Pのバランスの良さを考えると、 いろいろな和食とのマリアージュもきっとイケるね。
鼻先を擽る香りに誘われてバーテンダー氏の手元をみると、ミント千切りの内職作業中。 モヒート用だよね、と声を掛けると、モヒート+シャンパンなんて手もありますよと仰る。 あ、それ、いただきます(笑)。 ひと掴みのミントとライムのスライスをガシガシして、そこへ特製のシロップとラムを注ぎ、 クーラーで冷えていた「ローラン・ペリエ ブリュットL-P」を流し込む。 一瞬のシェイクののち、ロンググラスにミントの葉をあしらって。添えられたストローで啜ってちょっと吃驚したのは、 ミントの鮮烈な香りにほぼ支配されちゃってるのじゃないかなぁと思ったカクテルは、 ミントや柑橘のフレッシュな香りとL-Pのフレッシュなアロマが上手いことバランスして、 シロップとラムのコクがそれを支えてる感じ。 フレッシュでエレガントなL-Pの魅力は、 そのまま磨かれたグラスで堪能するのが本懐なのだけど、 L-Pが持つ安定感のあるバランスの良さは、 こうして他の要素と出逢っても、品格を失わない頼もしいつくりなんだね。
ハーブつながりで思い付いたパスタが「HYGGE ジェノベーゼ」。それは、バジルの香りが膨らませる鮮やかな旨み。 そこへさっきのモヒート+ローラン・ペリエを追い掛けると、 なはは、ハーブ&柑橘×LPの構図が立体的に浮かび上がってきて、 面白くも美味しく煌めくのでありますね。
ミッドタウンの開業と同じ年のオープンからこの6月に4周年を迎えたという、 六本木のBAR「HYGGE(ヒュッゲ)」。オーナーが雑誌で見つけたフレーズ”HYGGE”とは、デンマーク語で、 “人と人のふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気”、 “一緒にいて和める人と暖かく居心地の良い場所にくつろぎ、 優しい気持ちで時間を過ごす空間”といった意味だそう。 なるほど、ゆったりとしたバーの設計もそんな想いの表現の一端なのですね。
今宵はサントリーの企画、
「ロイヤルウェディングのシャンパンを楽しめるレストラン」
でお邪魔しました。
「HYGGE」 港区六本木4-10-6 AX ROPPONGI 7F [Map] 03-5770-3310 http://www.hygge.biz/
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