
新富の「青森の店」からの帰り道。
ロジスキーの性分は例によって、わざわざ細い路地へと足を運ばせます。
辿る足は、もつ鍋「一慶」のある筋へ。
その「一慶」のちょうど斜向かいあたりで、
装い新しきお店の前を通り過ぎたことに気がつきました。
看板を見上げるとそこには、
端正な筆致で「八眞茂登」の文字。
あれ、これには見覚えがあるぞと立ち止まって振り返ると、お店の入口に置いた丸椅子に座るオヤジさんと目が合いました。
あ、この方はもしや、あの店のあの方では!
気がついたらこう訊いていました。
「八眞茂登って、銀座にあった、あの八眞茂登ですか?」。

するとその御仁はニヤっと微笑んで、「そうですよ、ご存知ですか」と。
「ヴェトナム麺」で話題だった「八眞茂登」が「東東居」と相前後して店を閉めてしまったことは、
ヒロキエさんの記事で知って、残念に思っていたところ。
いま目の前にいるオヤジさんは、ヒロキエさんの四コマでもキャラの立っていた、あのオヤジさんに違いないではないか。
僥倖という言葉を脳裏に浮かべつつ訊くと、今月(11月)から居酒屋として営業を始めていて、近くランチもはじめるのですよ、仰る。
「しゅうまいもやるかも、ね」。
早速、ランチにお邪魔しました。
気持ちのよい花柄の暖簾を払って、引き戸を引く。
合板を駆使したシンプルなデザインの店内で、左手に壁に向かうカウンターが据え付けてあって、右手にテーブルが並んでいます。

新生「八眞茂登」のランチはふた品。
まずは「東東居」にも連想の飛ぶ、
「自家製しゅうまい定食」をいただきましょう。
女将さんが二階に向けて声を掛けると、オヤジさんのものらしき応答がある。
二階には10数名用の座敷があって、厨房も二階に設けているのだそう。
おちどうさまです、としゅうまいを届けてくれたオニイちゃんがどうやら二代目らしく、再びすたすたと階段を上がっていきます。

なるほど、以前「ヴェトナム麺」に添えてもらったものと同じ量感のシュウマイが5つ、ごろごろっと。


醤油を注そうと小皿をひっくり返して思わず、ニヤリとしてしまったのは、小皿の底にあの渦巻きマークがあったから(笑)。
はふはふしながらシュウマイを齧ってふと、そうかあの「八眞茂登」も「東東居」ももうないのかと改めて思ったりする。
あの時、もっと熱々だったらと思ったシュウマイにこんな形で再会するとはね。
その翌日、もうひとつの定食をいただきに。
テーブル席から正面にみる合板の壁には、筆文字になる夜の居酒屋メニューが貼られています。

実に気取りのない居酒屋メニューのそのバリエーションにまたニヤリ。
夜のラインナップにもある「大山鶏唐揚げ」をお昼の定食に仕立てた「大山どりからあげ定食」。

揚げ立てを齧って滴る大山鶏の脂と旨みに、夜はこれで麦酒!と想いを描く(笑)。
もちっとご飯が上手に炊けてたらいいな。
「八眞茂登」を始めたのは、昭和23年のことでしたのよーと女将さん。
初めから銀座にあった訳ではないらしい。
そこで、やっぱり気になることを訊ねてみました。
「もう、ヴェトナム麺はやらないのですか?」。
そうよねーと、でも柔らかな表情で説明してくれたところでは、継ごうとする息子さんにとっては地下に籠った油や匂いや湿気やなんやで決していいとはいえない厨房の環境が子供心にトラウマで、同じ厨房に立つことは難しかったのだそう。
そうこうするうちに、家賃の負担が圧しかかってくるようになって、両店を閉めることにしたンですよー、と。
自宅を改装したものだという今の店舗二階の厨房はそんなこともあって、中華料理仕様にはなっていないのです。
居酒屋として新生なった西八丁堀「八眞茂登」は、こっそり佇む路地の中。

居酒屋「八眞茂登」には「ヴェトナム麺」は、ありません。
ちょっと寂しいような、でも屈託なく話すオヤジさんや女将さんの表情と快活に動く二代目の姿をみているとそれでいいのだ、とも思うのでありました。
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「八眞茂登」
中央区八丁堀3-15-10
[Map] 03-3551-4456
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