本格焼酎屋「羅無櫓」で おまかせ吟味役小あじ唐揚げ蒸野菜鍋

ramuro.jpgいっそ住んでしまいたいと思う場所のひとつ、 四谷荒木町。 大井町や武蔵小山のディープゾーンとはまた違う、花街名残りの風情がちょっとオトナな路地路地がいいンだよね。 でも、そうは云っても、訪れる機会は多くない。 今夜はいっちょ、旧交温めに参りましょうか。 どこに潜もうかと選んだのが、 焼酎の店「羅無櫓」です。
味のある小料理屋、バー、エスニックに妖しいスナックなんかの看板を横目に路地を往く。 杉大門通りと車力門通りとの間を平行して走る柳新道通りという筋の暗がりを進むと、路傍の縁台に将棋盤が置かれ、駒が綺麗に並んでる。ramuro01.jpg小粋だねぇと思ったその場所が、目的地「羅無櫓」の店先でありました。 「羅無櫓」は、カウンターの店。 バックバーにも背中の棚にも、焼酎の瓶がずらりと並んでいるけれど、不思議と閉塞感なく、ゆったりと感じます。ramuro02.jpgそしてそのカウンターの中央で半袈裟のような井出達で迎えてくれるのが、 ご主人の官兵衛さん。 名刺には、「初代焼酎吟味役」の肩書きがあり、 柔和かつ含蓄のありそうな佇まいのオヤジさんだ。 一杯だけ麦酒を所望と、官兵衛さんに。 「羅無櫓」の「ギョーザ」は、具沢山のワンタンを焼いたような、 ちょっと異形のフォルム。ramuro03.jpg皮の魅力をまず全面に、かりかりと歯触りよろしく、香ばしく。 焼酎にも、勿論麦酒にもぴたりと寄り添う仕立てになってます。 焼酎はもう、官兵衛さんにおまかせで。 一杯目のグラスは、屋久島の「三岳(みたけ)」。ramuro04.jpgやっぱり、あっさりと軽めのところから、でもしっかりと風味のあるグラスだ。 ramuro05.jpg続く一杯は、甑島の塩田酒造の「六代目百合」。 ルイベ状態の「馬刺し」の解けるのを待つうちに、近況報告。 そこへ、扉を開けて入ってきたオッチャンの手には、 ナイロン弦のギター。 一曲演ってくれという声は掛からずに、見せる背中がちょと寂しい。 そうこうしている裡にグラスが空いて、お代わり所望。 「神座」は、黒麹仕込みのしっかり芋焼酎。ramuro06.jpg軽めタッチのものからグラデーションをかけるようにボディと風味の強いものへと変遷していく、官兵衛チョイス。 ちょっぴり加水でいただいております。 そこへ迎えたのが「小あじ唐揚げ」。ramuro07.jpgこれが、想定外に旨いのなんの! 炙り立ての干物に脂が滲んで、齧れば香ばしくも弾ける旨み。 皮と骨のぱりぱりした食感がまたその魅力を助長する。 あああ、うまい、焼酎に寸分のズレなく寄り添う也。 フクロウさんの彫刻が、そうそう素直に酔ってよいのだぞ、と静かに見守ってくれているようにも見えて心強い。ramuro08.jpgなんてことで、お代わりの手づくり本甕仕込みの芋「玉露」を舐めます(笑)。 バックバーの棚の上に、ピッケルや古びたごつい靴なんかが飾られているのは、 登山愛好家の印。 そう云えば、扉の脇に掲げた看板には、 ザイルを繋いで急斜面を登坂するシルエットが描かれているのです。 ramuro09.jpg 次からは温かいのでいただきたいですと官兵衛さんにお願いして登場したのが、じょかの一種でサーブされた黄金千貫仕込み「桜島」。 芋のボディが丸いふくよかさに整った呑み口になっていて、いい。

お隣さんのオーダーが気になって便乗したのが、「蒸し野菜鍋」。 ちょっと前より話題のタジン鍋を使った、野菜鍋なのだ。 ramuro10.jpgでっかい徳利のようなフォルムの蓋をぱかりと外すと、 湯気とともに一面のキャベツ畑が現れる。ramuro11.jpg 菜箸で底の方を起こすようにすると、トマトや人参、薩摩芋、鶏肉なんかの具材が顔を出す。ramuro12.jpgまだ口にしていないのに、具材それぞれの持つ旨みが活き活きとぎゅーっとその組織に沁み込んでいそうにみえる。 えへへ顔で箸を伸ばせば、キャベツの甘さがしゃくっと弾け、鶏の滋味がしみじみとし、ほの酸っぱいトマトの甘さが色を注す。 いいね、旨いね、美味しいね。 聞けば、アボカドオイルを垂らしているくらいで、出汁を入れるどころか、塩もしてないそう。 ふと、てんこ盛りに味わいの層を重ねるような料理に疑問が沸いてくる。 ramuro13.jpg素材が悪くなけりゃ、こんな調理でいいんじゃない?みたいな、ね。 具材たちのエキスを鍋の底まで綺麗に平らげる。 既に定番となりつつあるタジン鍋料理だけど、それが焼酎の素朴さと絶妙にマッチしているのだね。 最後の一杯を佐多宗二商店の定番「晴耕雨讀」でいただいて、うん、満足の夜でありました。

荒木町柳新道通りで縁台将棋が目印の、本格焼酎屋「羅無櫓(らむろ)」。ramuro14.jpgramuro15.jpg店名「羅無櫓」は、ネパール語でベリーグットとか、美味しいとか、素晴らしいとかを意味する”らむろっつぁ”の音から名付けたそう。 官兵衛さんがヒマラヤ山地の言葉に想いを馳せるのは、岳人ならではか。 ゆるゆると焼酎とそれに似合う酒肴がいただけるカウンターは、12年目を迎えたところだそうです。 帰りがけにやっと、以前何度か寄ったことのあるマジックバー「八時」の斜向かいであることに気がつきました。 口関連記事:  マジックバー「銀座 八時」で 水割り舐め舐め愉しむマジックサロン(06年03月)


「羅無櫓」 新宿区荒木町七番地[Map] 03-3358-9515
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