旧日産本社近くの裏通りにうどんのお店があったなぁと考えながら、歌舞伎座を背にするように晴海通りから折れ入ったのは、さよなら公演興行中の4月上旬のことでした。
ふと見た左手の真新しいビルの前に、ランチ営業中の立て看板が出てる。
その名を「銀座 壮石」。
寿司店のようですが、どんぶりモノの用意もあるみたい。
例によって、限定10個という但し書きに惑わされて、予定変更、ビル2階へと進みました。
3月下旬にオープンしたばかりだという店内は、まさにそのまま新しい設えで、それは少々素っ気ないほどすっきり。
余計な装飾を排除しようとする意図があったとも受け取れます。
そんなカウンターの隅へとお邪魔しました。
ふた品あるどんぶりからまずは、「穴子丼」。
先に届いた茶碗蒸しをあちちと啜りながら、 硝子ケースはスリムだなとか、そういやつけ台がないじゃん、などと考えてまたあちち。
とかなんとかしているうちに、ガリをあしらった「穴子丼」がやってきました。
どんぶり一面を覆い尽くすようにした穴子の身は、スタンダードなふっくら感。
タレにたっぷり浸った身を一枚づつ、その下の酢飯と一緒に頬張ります。
やっぱり酢飯なんだろうか、普通のご飯の方が旨かったりするような、でも鮨屋でそれはないか、などと考えながら食べ進むと、酢飯と酢飯の間に煮〆た椎茸が挟まっているのを発見。
そんなひと工夫が嬉しがらせます。
月が替わったところで、今度は「まぐろづけ丼」。
やや黒みかかるほどにしっかり浸かった赤身のヅケが、これまたどんぶり一面を覆っています。
うーん、間違うことなき鮪のヅケのどんぶりなのだけど、なぜだかふと「京すし」のどんぶりに抱くわくわく感を思い出して、物足りなさを感じてしまう。
決して不味い訳ではないし、料金設定もきっと頑張っているに違いないのだけどね。
「銀座 壮石(そうせき)」を開いた旧地名・采女町は、天皇の食事の給仕に当った後官の女官「采女」の住む地であったことに由来する、とパンフレットにある。
そして、「築地寿司岩」の血統を継ぐ、創業八十九年のお店、とも。
なぜに「壮石」かとお訊きすると、「営っております者が壮右と申しまして、懐石にも通じることもあって、壮石とさせていただいています」とのこと。
ブログには、大好きな作家夏目漱石の「そうせき」という言葉の響きを取った、ということや「寿司岩」の「岩」との連関も考えてのこと、ともあります。
世の中、ふとした思い付きで決まる店名もあれば、あれこれ悩み思い巡らせて決める店名もあるのですね。
こちら「銀座 壮石」が入ったビルのテナントサインをみると、
1階に「あら輝」という文字がある。
とうとう上野毛を離れて、銀座に出てしまったのかな。
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「銀座 壮石」
中央区銀座5-14-14 サンリット銀座ビルⅡ2F
[Map] 03-6228-4659
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